CAPMの逆襲

リスクの取引に現われる固有値問題

パズルの最後のピースに、指が掛かった気がする。学校の時に取り組んだ固有値問題の姿を装って、それが目の前に現れたことは、なんだか嬉しい。CAPMのような、APTのような、まだ全貌の見えていない、すこしぼんやりした話だが、継続的に取り組んでいきたい。…

リスクの「適正価格」

では、今、米国のビジネススクールに行くことの「公正な価値」はいったいいくらなのでしょう?それは、そこで学位を取ったことで上昇する将来の給与の合計ということになります。その合計が、かかる費用(授業料や報酬に加え、働いている人が留学した場合は…

個人投資家のためのリスクマネジメント

忙しいひとのために、結論から先に書いておこうと思うが、1)どんなリスクを、2)どのくらいとるのか、この二点が肝要である。リスクマネジメントみたいな単語を持ち出した瞬間に、「ちゃんと日誌を書こう」と言いだした学級委員を見るような目で、こちらを眺…

ソーシャルデリバティブズ

15日の夕方に行われた、慎泰俊さん「ソーシャルファイナンス革命」の出版記念講演*1で対談をさせていただいた際に使ったスライドが下記*2なのだが、主催のFEDさん*3の理念でもある、未来の金融の姿を探ろうという大きなチャレンジに、微力ながらタックルして…

投資家は銀行の株式保有を求めていない

銀行の株式保有は収益を不安定化させるので削減を進めろという下記の日銀レビューが、先週に出ていたのだが、 全く同じ内容のレポートを [twitter:@TrinityNYC] さんが20年前に書かれた*1という。つまり20年もの間、その分量はともかく、我が国銀行の収益リ…

アクティブ運用の値段

物やサービスをお客さんに売ったり、作業や能力を会社に売ったりしていると、あらゆる値段は結局のところ需要と供給に晒されているのだと、一部の例外(規制のことだが)に苛立ちながらも、感じざるを得ない機会は多いわけだが、とても市場に近い場所で売ら…

フィリップス曲面について考える

勝手に曲面にしてしまったが、例の6次元の奴*1だ。物価や失業率を考えるのに、平面で切り取っちゃ駄目だろという話で、しかしこういう手強い相手には、どうしても均衡アプローチを探りたくなってしまう。要するに遠い未来を考えたくなってしまう。もちろん曲…

金利とは何か

[twitter:@fedjapan] さんで、欧州の問題について、(短期)金利の観点から、お話しさせていただいたのですが、家に帰ってきてみると、ドイツ国債の札割れがニュースになっていたり、今の話題に取り組む面白さを改めて感じました。もちろん、見えないこと、…

リスク指標としてのTWEET

「ツイッターの空気は株式市場を予測するか?」という論文を、いつもの勉強会*1で読んだのだが、その直接的な結果よりも、様々に発想を刺激されて、とても楽しかった。試行と結果は簡潔に記されていて、とても読みやすいのだが、ツイッターの投稿に読み取れ…

チャレンジの三角形

全国の啓蒙書ライターの皆様には是非パクっていただきたい、ビジネスのリスクにかかる直角三角形について、ご紹介しよう。とてもシンプルで、きっと示唆に富んで、素敵な酒の席と、そして明日を提供するはずだ。あらゆるビジネスのリスクは、1)市場リスクと…

独自のチャレンジ成分

我々のチャレンジはいつも、誰かのそれに似ている部分と、独自のオリジナル成分とに分けられると思うのだが、自分向けのメモなので、乱暴かつドライに書きます。 誰かのそれに似ているリスクには、プレミアムを要求されると思うのがCAPMだが、その大きさは、…

アクティブなリスクの配分問題

アクティブな資産運用リスクへの投資配分を、どのように決めればよいか、という古典的な問いに対しては、要素に分解して考えることで、基本的な道具を持ち出すことが可能だ。 投信1 = 株式 + 超過1 投信2 = 債券 + 超過2 ある投信1は、株式をベンチマークと…

微分アプローチ

「公正価値会計の経済的帰結」という日本銀行金融研究所のペーパーを、 [twitter:@fujisakitatsuya] の呟き*1で知ったのだが、触発されて書いてみたい。というのも、某所で会計について講義させていただくことになり、この点について、とても興味を持ってい…

原発チャレンジ

なるべくシンプルに書こうと思うのだが、ある原発が来年までに大きな事故を、B)起こさないと賭けた馬券*1は、最後は必ず誰かが負担しなければならないリスクを負担しており、それゆえプレミアムが返される。言い換えれば、それは世界のチャレンジの全体とし…

投資の消費性について

昨日の記事を広めていただきました皆様、ありがとうございました。背中を押していただいた [twitter:@kenchamam] にも深く感謝します。すべてのチャレンジャーを、ほんのすこしだけ、助けたと信じています。大変な一日は夕刻を迎えつつありますが、暮らしも…

アクティブ運用のリスクプレミアム

21世紀にもなって、「アクティブ運用は平均的にはインデックスを下回るから、おすすめできない」などと、ドヤ顔で主張する専門家があちこちに沢山いるのは、実に残念なことだ。実際のところ、どうしようもないアクティブ運用が多数存在することは確かだが、…

包括緩和による紙幣リスクプレミアム

どうにも抜いた親不知がズキズキ痛くて、よく眠れないなと思いながら、ついつい布団の中で考えてしまった標記について、メモ代わりに書き残しておこうというアクションです。とはいえ我ながら、相当どうでもいい内容だ。ざっと、軽く、読み飛ばして下さい。…

霧の先に続くバランスシート

Fama-French(1992)*1を読みながら、やはりモジリアニとミラーの子なんだと、なんというか要するに、バランスシートを連想した。通常のそれとはすこし違った、どちらかといえば今風のそれだ。もちろん、こんなやつが通常のそれ。ALB一方で、こいつには載って…

資本コストなんて存在しない

WACCなる概念を、ずっと理解できずにいた。その何十年も前に発見された、モジリアニとミラーの帰結に反するように思われたからだ。以前にも似たようなことを書いた*1が、資金調達の手段を変えたところで、その弾を突っ込んでいるビジネスのリスクが変わらな…

ポートフォリオにゼロベータファイナンスを組み入れる

実際に、我々はゼロベータファイナンスを、どれだけ自分のポートフォリオに組み入れたいと思うだろうか。簡単のために、ゼロベータファイナンスと現在のポートフォリオとの間に相関がないと仮定*1しよう。その配分Wzeroは、現在のポートフォリオの配分Wm、そ…

ゼロベータファイナンス

Taejunomics 日本でマイクロファイナンスができない理由 http://stjofonekorea.blog6.fc2.com/blog-entry-1418.html マイクロファイナンスにおいては、この借手探しのコストは地元のコミュニティが負担しているわけです。(よい借手探しは、いつもその人と顔…

均衡ビジネスユニットを探る

[twitter:@81TJ] さんの「組織における多様性と同質性のバランス」についての記事*1に触発されて、組織と人材、あるいはそのポートフォリオについて考えてみた。それは、以前から常々考えていたビジネス単位のあり方についての問題、我々は合併すべきか否か…

最小分散ポートフォリオをカモる財務戦略

「リターン予測など当たらない」という信念は、「インデックス運用に投資しろ」という主張として表現されるのが定番だ。「世界をそのまま買おうぜ」というシンプルな提案は、世界って何だという、実はあまり簡単でない問いさえ一旦横に置いておけば、とても…

均衡マネジメント報酬

金融機関の報酬が高過ぎるとか、アクティブ運用する投資信託の報酬の考え方とか、そういったお話をする機会があって、上手に理屈で表現できないものかなと考えてみたところ、あっさり出来た。しかも会心だ。結論から言えば、チャレンジがユニークであるほど…

CAPMの逆襲(5) - ブラックの探検

この秋に再びハードカバーで出る*1記念にと、Business Cycles and Equilibrium作者: Fischer Black,Perry Mehrling出版社/メーカー: Wiley発売日: 2009/11/02メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 74回この商品を含むブログ (8件) を見るに目を通して…

CAPMの逆襲(4) - MM定理を自然に拡張する

モジリアニとミラーの定理*1ってのは、もう50年も前に発表された、「資金調達の方法によって、企業の価値は変わらない」という、よく考えてみると当たり前だが、素晴らしく画期的で、かつ刺激的な議論である。どんなものか、超簡単に例示しよう。企業が新た…

CAPMの逆襲(3) - どうして株は上がるのか

株は上がります。このことを確信を持って理解されている方は、どうも思ったよりも少ないように感じられますので、再び強調しておきます。株は上がります。例えば日経平均株価は、いつか必ず間違いなく、10万円を超える日が来ます。 もちろん1万円の銀行預金…

CAPMの逆襲(2) - 誰がリスク負担の見返りを払うのか

表が出たら100円を貰うことのできるコイン投げゲームに、いくらでなら参加しますか? すこし前に、知人に聞いて回ってみたことがあります。クイズじゃなくてアンケートだと言ってるのに、「正解」を探そうとするひとが多くて驚いたのですが、「タダならやる…

CAPMの逆襲(1) - リスクの視点から世界を眺める

突如連載的な気分になったので、遠慮してても仕方ないので、とりあえず書き始めてみるのですが、構成やら順序やら、それ以前に書きたいことの全貌すら、明らかにならないまま徒然るので、先行きはまったく不透明であることを容赦下さい。なるべく長く続くよ…