アクティブなリスクの配分問題

アクティブな資産運用リスクへの投資配分を、どのように決めればよいか、という古典的な問いに対しては、要素に分解して考えることで、基本的な道具を持ち出すことが可能だ。


投信1 = 株式 + 超過1
投信2 = 債券 + 超過2


ある投信1は、株式をベンチマークとしつつも、独自の選別によって付加価値(超過1)を与えることを目指す。ある投信2は、債券をベンチマークとしつつも、独自の選別によって付加価値(超過2)を与えることを目指す。このとき株式と債券、そして投信1と投信2への配分問題は、共通する要素を括り出すことで、以下のようなマーコヴィッツの問題へと還元することができる。


相関係数リスク
水準
配分見通し
株式20%60%4.98%
債券0.14%40%0.23%
超過10.205%30%0.39%
超過200.201%20%0.01%


投資配分は、株式エクスポージャの半分(=30%/60%)を投信1で、債券エクスポージャの半分(=20%/40%)を投信2で、持つことを意味する。残った半分に関しては、株式も債券も、ETFなりパッシブ投信なり、先物なりスワップなりを利用し、好きに獲得すればよい。


与えられた相関係数とリスク水準について、ある見通し*1を表現する配分は一意に決まる。逆向きに言えば、任意の配分*2に対して、そのとき持っているはずの見通しを、押し出すことができる。「超過1」あるいは「超過2」への見通しが、小さいと感じられるかもしれない。お手元に計算機があれば、ご自身で確認いただくのが手っ取り早いが、特に計算を間違えてはいない。アクティブなリスクに、もっと期待できると考えるのなら、株式や債券への投資エクスポージャに占める投信の割合を引き上げる理由になるわけだが、あるいは、もしかすると潜在的には、それらは株式や債券との相関が高い*3と考えている場合もあるかもしれない。


アクティブな資産運用リスクへの配分計画について、上記のように考えるとき、その内容やリスク水準について明示しないマネージャの評価は、すこし面倒だ。ポートフォリオを構成する要素は、常に全体との関係において評価するのだから、その性格が明らかでないものが扱いにくいのは、本来自明のことだろう。資産運用ビジネスの歴史は浅い。投資について我々が知識と経験を深める25世紀には、それが一体どんなリスクなのか、どのように顧客に提供されるのか、あらゆる商品について明示されていることを予言しておきたい。

*1:相対感に着目、つまり定数倍は同じものと見よう

*2:例えば世界の全体だ

*3:いずれにせよパニック時には、資金は同時に引き上げるからだ