2014-01-01から1年間の記事一覧

自社株買い及び自国通貨買い介入の定理

簡単のために、負債はなく、現金だけ持っている会社について考えよう。特に価値のない商売のみ、他に抱えていると思っていただいても差し支えない。もちろん、そんな仕事で給料が取れるはずもないが、この点について後で拡張することは容易である。 現金10,0…

成長戦略としての日経225改革

アレイオンは2013年9月25日の取引終了直前の30秒間に、日東電工株に大量の買い注文を出し、不正に株価を釣り上げた。株価への影響が大きかったことから相場操縦に当たると判断した。同日終値は前日比15%(1000円=ストップ)高の7540円だった。 アレイオン…

出口でなく復路戦略

代表なくして課税なし

たしか現代社会という科目だったと思うが、高校のときに教えてくれた先生を、僕らは親しみを込めて勝手に、八っさんと呼んでいた。いつも満面の笑みで、クラスの誰を差別も区別もすることなく話しかけては、教科書には載っていない現代社会を、八っさんは教…

多次元フィッシャー方程式

あなたと僕とでは、明日の消費は互いに異なって、またアイテム毎の物価見通しも異なる。あなたは鮨屋に立ち寄るかもしれないが、僕は蕎麦屋に向かうだろう。電子機器の価格動向についても、異なる見解を持っている。フィッシャー方程式を書き直そう。 実質金…

フロントランニング、リスクプレミアム、モメンタム

大量の取引を、誰かが事前に宣言した*1としよう。あるいは「知ってしまった」と考えてもよい。例えば来月末に、現在50円程で取引されている株を、100円までなら買いまくるといった内容だ。 フロントランニング 投機屋としての我々は、もちろん事前に買い集め…

タイミングを計る年金

安倍首相は要するに、これから株は上がるんだという願望を土台に、年金は買えと言いたいわけだ。大枠を変えることが「常識」なら、そもそもモデルもへったくれもない。 首相、GPIF運用「モデル変えていくのは常識」 : 日本経済新聞 http://www.nikkei.co…

しゃっくりとモメンタム

「サプライズを演出」だとか、金融政策はビックリさせた方が偉いみたいなことを、したり顔で語る連中が最近増えてきたような気がするが、当然のことだが物価も経済も、しゃっくりとは異なるので、驚かせたからといって特にいいことはない。待ち構える投機屋…

タコ足を肴に迎え酒

どうにも何も書く気が起きないのだが、一年半前にも同じ書き出しで、壮大な花見酒*1とメモした。ともあれ日銀*2と年金*3に、株やら不動産やら国債やらを買わせるそうだ。面倒だから端折るが、要するに政権が買わせるわけだ。不愉快極まりない。 日銀は「リス…

スマートベータによる市場リスクの対角化

「スマートベータ」なる特に目新しさのないマーケティングも含めて、何をどう格好つけてみたところで、結局のところ市場で取引されている株式の組み合わせによって、チャレンジは表現されることになるだろうと、こんなふうにn銘柄への配分ベクトルの形で書き…

たった2つの産業から成るネバーランドの話

目の前の工業製品が、以前よりも安く売られるようになった話を、今週ビール片手に繰り広げたのだが、どうにも表現力の不足を感じたので、ひとつ汎用的な筋立てを考えて、自分のためにメモしておきたい。たった2つの産業から成る、そうだな例えばコメ農業とコ…

ゆうちょ銀行の4兆円を均衡ビュー

みんなの党が「ゆうちょ銀行の上場前に国民の財産を取り戻せ」的な、ちょっと何言ってるかわからない主張を展開している件について、こうした腑に落ちる解説を前提として置けるのなら、当ブログとしては視点だけに集中して、いつものように遊べるってもので…

貨幣政策のご提案 - スコットランドの未来に向けて

イギリスって本当にすげえなと感じざるを得ないのだが、スコットランド独立の可能性がゼロでないばかりか、ほのかに膨らんできたようで、あちこちで皆が慌てふためいている。そりゃそうだ。独立国としてのスコットランドは、一体どんなふうに財布をやりくり…

中銀「調達難」理論

ECBが利下げ*1した。またリスクのある債券を買う*2という。なかなかパンチのある決定でシビれたが、その後の報道を眺めると、各所で咀嚼できずに混乱している様子もある。まず簡単に解説し、また今後に起き得る状態と理屈について、整理してみたい。 今回の…

氷水で頭を冷やしたら、寄付とよりよい世界について考える

(寄付をしないのなら)次のチャレンジャーを指名してバトンを渡しつつ、氷水を浴びる動画を撮影しろという、爆発的に広がったキャンペーンで、筋萎縮性側索硬化症*1という難病について、僕は知ることになった。バケツをひっくりかえして、冷たくてあわてる…

シーゲルのパラドックスを解き明かす

どうにも寝違えた首が痛くて、仕事を進める気が起きないのだが、かといってアクティブに動けるわけでもないので、とりあえず画面に向かって記事を書き始めた。こういうときのネタは、引き出しの奥から探してくる。 さてシーゲルのパラドックスとは、外貨エク…

多様への挑戦

この場所で、この問題を採り上げることが望まれているのかどうか、よくわからないが、ただ最近ネタ不足気味でもあるのと、あまり腑に落ちる議論を見かけなかったので、メモしておきたい。 都議会での少子化にかかる質問中に「お前が結婚しろ」と飛ばされた野…

日銀が追加緩和で「マイナス金利」のECBをぶっとばす方法

ECBが「マイナス金利」だそうですが*1、こんなものね、屁のツッパリにもなりません。カネを預ける側から見れば、要するに利息が付かないばかりか、逆に利息を取るってんだから、だったら預けねえよって話ですよ。それだけ。じゃ代わりに誰に貸すのかって、手…

永久運動の夢、金融政策の希望

永久運動の夢 (ちくま学芸文庫)作者: アーサーオードヒューム,Arthur W.J.G. Ord‐Hume,高田紀代志,中島秀人出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/01/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (7件) を見る 永久運動研究家の大多数が、必要な原理の基本的な理…

インフレ税

セブンイレブンのパンが小さくなった。僕の好きなキャベツの入ったメンチカツのパンの話だが、量が減った商品は、他にも沢山あるように感じている。あるいはレジで支払うタイミングで、アレっと思うことがある。思っていたよりも、すこし高い値段が表示され…

パススルー議決権行使

そもそも機関投資家なんてのは、生きている人間じゃない。機能を持った箱に過ぎない。そして株主としてのアクションが、その主たる機能でない場合は少なくない。 我々の経済が、何をつくり出していこうとするのか、そのためにどんな投資をするのか。決めてい…

コングロマリット・ディスカウントの幾何的な表現

厳選に厳選を重ねても、エイエイと適当に選んでも、ほんのすこし株式を組み合わせるだけで、合計した値動きは急速に、いわゆる市場ポートフォリオのそれに近づいてしまう。ちょっとでも株を触ったことがある者なら、誰でも知っている基本的な事実である。「…

経済は家計とは違う

と題するクルーグマンのコラム*1は、サージェントによる経済学が教える12のレッスン*2のひとつ 2. Individuals and communities face trade-offs. へのコメントで、タイトルから想起される「政府は紙幣を印刷できる」というような与太話では全くない。マクロ…

大好きなエクセルに向かうとき、たったひとつだけ僕が気をつけること

[twitter:@81TJ] のエクセル本が素晴らしくて、僕が応援しなくたって沢山売れそうだけれども、それでも書きたくなったので徒然してみようと思う。 外資系金融のExcel作成術: 表の見せ方&財務モデルの組み方作者: 慎泰俊出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売…

貸しの生活

久々にジャケ買いというか、タイトル買いをしたのだが、どうしても金融屋の立場からツッコミを入れたくなってしまうのは、仕方のないことかもしれない。 借りの哲学 (atプラス叢書06)作者: ナタリー・サルトゥー=ラジュ,國分功一郎(解説),高野優,小林重裕出…

アクティブ運用のためのタイミング取引

下落すると思ったら「機動的に現金の比率を高める」投信が人気だそうだが、市場タイミングを探る取引をどのように組み立てるか、具体的に考えてみよう。 ∑wi⋅βi + wtrade⋅βtrade = βbenchmark + βactive いきなり数式で恐縮だが、大したことは書いていない。…

広義の税金が投入される先

ロン爺は「FRBは貧乏人からカネを盗んで富裕層に配っている」と主張した*1が、実際のところ、低金利誘導は貸し手から借り手への移転である。貸し手とは誰かといえば、とてもシンプルで、預金等の形で資産を抱える家計だ。もちろん企業や政府部門も多少の預金…

黒田総裁講演雑感

「大規模にやりましたので、いまのところ順調です」 いつも壊れたレコードみたいに繰り返すので、彼の話には興味を失っていたのだが、ここ数日の講演を覗いてみると、なんだか裸の王様みたいだ。 【講演】黒田総裁「なぜ『2%』の物価上昇を目指すのか」(日…

先進中銀のための受動的金融政策入門

イエレン率いるFOMCの初回で注目されたのは、いつまで低金利誘導を続けるのか。これまで物価と失業率を参照すると言っていたところを、より総合的に判断しますよと言い換えた*1わけだ。失業率は低下したけれども、どうにも状況はよくないように思われるので…

貨幣に求められる唯一の機能

貨幣の「三つの機能」まで遡り、ビットコイン騒動について、理解や解説を試みた記事を見かけるのだが、1)交換可能なこと、2)価値を測れること、3)資産性という三つは、並べてみても互いに独立とも思われず、また環境に依存する性質は無視できないようにも思…