リスク指標としてのTWEET

equilibrista2011-09-03

ツイッターの空気は株式市場を予測するか?」という論文を、いつもの勉強会*1で読んだのだが、その直接的な結果よりも、様々に発想を刺激されて、とても楽しかった。試行と結果は簡潔に記されていて、とても読みやすいのだが、ツイッターの投稿に読み取れる「ムード」を分類すると、そのいくつかは数日のラグを置いて、代表的な株価指数の動きを「説明」する。


Twitter mood predicts the stock market.
http://arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/1010/1010.3003v1.pdf


残念ながら個人的には、何日も前のTLに流れていた雰囲気が、今日の株式市場を恒常的に説明するとは思えず、それよりも日常的なつぶやきの交換の中に、現在の環境や将来に見積もる利益、割り引くリスクの表現を見つけることができるはずだと、夢が膨らんだ。


具体的にいこう。t-j時点のツイッター上の雰囲気Xiによって、株価が説明されると考えるよりも、


Rt = α + ∑∑βiXi,t-j + ε


同時点のツイートから読み取れるリスク指標Xiによって、変化は表現されていると考えたくなった。


Rt = α + ∑βiXi,t + ε


僕らは、ノリノリで呟いてから、その三日後に株を買ったりしない。イケ!とか、飛べ!とか、常に評価には祈りを込めながら、物事は同時進行する。株価の「予想」に用いるよりも、むしろ取引の動機を、ツイートから拾ってみたいと思ったのだ。前者と後者では、そもそも考え方が違うので、もちろんピックアップすべきXiは互いに異なってくる。端から試してみる前に、市場では実際には何が起きているのか、自分はどんなふうに行動するのか、よく考えるのは大切なことだ。例えば、こんなふうに僕らは考え、行動しているように思えた。


株価 ∝ β1⋅[商品のイメージ] + β2⋅[業績の予想] + β3⋅[リスク環境のムード]


新しいアレ具合よかったぜとか、連中儲かってるらしいよとか、欧州の財政不安だねとか、そういったコメントから各指標をつくり出すとき、株価はそれぞれに、その各指標に対して感応するはずだ。つまり任意の株式のリスクは、これら複数の指標の重ね合わせとして表現される。もちろん、銘柄に固有の指標もあれば、複数の株式、あるいは市場の全体に共有される指標もあるだろう。


ツイートの素敵なところは、銘柄に個別の情報も、よりマクロな統計も、公表されている情報への感想も、風の噂への見解も、その濃淡まで含めて、同じように表現されることだ。「すべての情報が反映されている」株価の一部を、これらの指標同士が競い合って構成すると考えるとき、僕らのリスクマネジメントは、よりソリッドなものになる。最高にエキサイティングじゃないか。


さて、宣伝です。こうした枠組みに関するご相談、いつでも承ります。それから勉強会*2では、真剣かつ勤勉な方の参加を、いつでも歓迎します。

*1:土曜朝六時半渋谷

*2:[twitter:@81TJ],[twitter:@komehanaya],[twitter:@realoptioner],[twitter:@kaziida]