2012-01-01から1年間の記事一覧

安倍コノミクスへの対処マニュアル

安倍次期首相が日銀に要求する「大胆な金融緩和」について、慎重派の重鎮の先生方が、ややテクニカルだが骨太なツッコミを相次いで発信された。21世紀にもなって、これほどベーシックなのにホットな話題も珍しいわけで、じゃんじゃん殴り合うのが楽しいと思…

日銀発デフレ不況に憤るランボー怒りの紙幣ボイコット

デフレ不況だってのに、呑気な顔しやがって許せない。トボケた日銀を懲らしめたい。お灸を据えたい。そんなふうに考えるとき、日銀法改正なんてのは、まどろっこしいだけで、どうせ邪魔が入るんだから実現可能性だって怪しい。もっと直接的で、強力なやり方…

すべての紙幣を皆がスイカにチャージしたマクロ経済学

似たような話を、既に何度か書いているような気もするのだが、重複にビビってブログなぞ続けられるものか。似たような音楽を量産し続ける魅力的なミュージシャンだって、挙げればキリがない。未来の金融政策の話なら、俺に任せなよ。というわけで、財布の中…

財政危機と国債暴落について学びたい議員先生のための投信選び

財政は本当に危ないのだろうか。国債は本当に大丈夫なのだろうか。さまざまな「ブレーン」が、それらしいことを吹くけれども、いまひとつ何を言っているのか理解できない。どうにも肌で感じられない。そんな不安を抱える議員先生のために、投資家の気持ちを…

拡張された金利平価

金融政策はどのように効果がないか

安倍総裁の話ばかりで恐縮だが、彼の突飛な主張に市場が反応したことに対して、本人も含めて、ポジティブに考えている方々がいるようだが、他方で当ブログでは、これも含めた「非伝統的な」アクションだけでなく、そもそも金融政策など、いずれ失われざるを…

「国債の日銀引き受け」を読み解く際の注意点

日銀が国債を買う 日銀が国債の保有残高を増やす 日銀が国債のリスク負担を増やす この三つは、それぞれ意味が異なるのだが、パッとイメージが湧いてくるだろうか。日頃から債券に慣れ親しんでいるひとには当たり前の話でもあるのだが、このところの安倍総裁…

居酒屋政談のための簡潔な「安倍総裁による日銀批判」批判アンチョコ

n%のインフレターゲット 「物価目標?未達の目標引き上げたら、営業成績上がるの?」 目標に達しないのは真面目にやってないからだという、駄目な支店長の典型みたいな小理屈は、未来に向かってロクな「改革」を生んだ試しがない。この手の「わかりやすい」…

誰がお金の量を決めているのか - 貨幣の負債性について

誰も決めていない。あるいは、それぞれの我々が決めている。例えば一万円札について、具体的に考えてみよう。どのくらいの一万円札を、あなたは財布の中に入れているだろうか。特に用事がないとき、あまり高額を持ち歩くのは不安なので、いつもより少なめに…

「なでしこリスク」プレミアム

さて、こんどは任意の企業が持つ「なでしこリスク」成分について考えてみよう。例えば日産は、日本株で、自動車セクターで、大型で、どちらかといえばグロースで、かつ「女性が活躍している」と思う。先日のベータのスペクトル分解*1を考えるなら、日産に要…

浮かんでは消える「なでしこリスク」

経産省と東証が「女性が活躍する」上場企業で指数をこしらえ、投信等に利用してもらって、資金の流入を促したいそうだ。 「なでしこ銘柄」選定へ 女性が活躍する10〜20社 : 日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS25030_V21C12A0EA2000/ あま…

ほしいものをつくったGDP

皆がお金を使わないと、お金が回らないから、よくないんだって。 部分的に正しい指摘を含む、このセリフが食事中に相手の口から出てきたとき、正直戸惑った。これが例えば、政策や経済の理屈にかかる議論の最中なら、いくらでも引き出しを開けて、持ち出す道…

社会、経済、競争的な通貨市場

しばらく前の総裁講演だが、こんな中銀総裁は今後、現れることはないだろうと確信させる、凄いフレーズが満載のマスターピースだ。 【講演】白川総裁「社会、経済、中央銀行」(Foreign Policy Association(ニューヨーク)):日本銀行 Bank of Japan http:…

悲観的なメッセージとしての議員先生による「国債大丈夫」論

国債の格付けと実際の信用度 - 中村てつじの「日本再構築」 http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20121002#p1 アメリカや日本は、自国通貨建てで国債を発行しているので、急激に債券の価格が下がる(=金利が暴騰する)というようなことがあっても、中央…

ベータのスペクトル分解

こうして市場参加者が決める*1基底の眼鏡で世界を眺めるとき、僕らのベータはどんな様相を見せるのか、何よりも気になってしまう。n個の固有値 λ1,λ2,...,λn は、対応する固有ベクトルつまりリスクを表現するポートフォリオにかかる分散を表現し、それぞれの…

リスクの取引に現われる固有値問題

パズルの最後のピースに、指が掛かった気がする。学校の時に取り組んだ固有値問題の姿を装って、それが目の前に現れたことは、なんだか嬉しい。CAPMのような、APTのような、まだ全貌の見えていない、すこしぼんやりした話だが、継続的に取り組んでいきたい。…

異なる時点の株価を比較する

今の政局関係で、安倍さん、中川さんらの成長重視の方々の名前がちらほら。過去10年間で株価が一番高かったのはこれらの方が成長重視の経済運営していたときで18261円。過去10年間の平均は11600円。民主党政権の平均は9600円— 高橋洋一(…

リスクの「適正価格」

では、今、米国のビジネススクールに行くことの「公正な価値」はいったいいくらなのでしょう?それは、そこで学位を取ったことで上昇する将来の給与の合計ということになります。その合計が、かかる費用(授業料や報酬に加え、働いている人が留学した場合は…

個人投資家のためのリスクマネジメント

忙しいひとのために、結論から先に書いておこうと思うが、1)どんなリスクを、2)どのくらいとるのか、この二点が肝要である。リスクマネジメントみたいな単語を持ち出した瞬間に、「ちゃんと日誌を書こう」と言いだした学級委員を見るような目で、こちらを眺…

需要と供給で決まる金利はひとつしかない

(実質)金利の水準が変われば、将来の生活にかかる費用や、借金の重さは変化してしまう。そんなふうに大きく社会に影響する値段を、一体誰が決めるのか。中央銀行?馬鹿を言っちゃいけない。部分的には、また歴史的にはイエスだが、そんなハリボテは長く続…

実質金利の概念にタックルする

インフレ=借金してでも買おう(将来買おうと思ったらもっと高くなる) デフレ=買い控えて現金で持っていよう(将来もっと安くなるから) インフレのある暮らし – 15年ぶりの1ドル80円時代に思うこと | On Off and Beyond すこし不正確なのは、金利のことが…

公的年金を確定拠出に

「極めて深刻な事態で、このまま制度を続ければ国の財産が目減りするのは明らかだ。」 民主、厚年基金廃止を本格検討 積立金不足受け http://www.47news.jp/CN/201207/CN2012071901000954.html おっしゃるとおりだと思うのだが、もちろん同じロジックから公…

ソーシャルデリバティブズ

15日の夕方に行われた、慎泰俊さん「ソーシャルファイナンス革命」の出版記念講演*1で対談をさせていただいた際に使ったスライドが下記*2なのだが、主催のFEDさん*3の理念でもある、未来の金融の姿を探ろうという大きなチャレンジに、微力ながらタックルして…

25世紀のファイナンス

中央銀行が「特別な存在」であり続けることは難しい

バランスシートの規模を示す「金額」だけを振りかざして緩和効果が発揮されるのか、謎である。 高橋洋一氏の日本の解き方「日銀の説明たれ流す報道はアテにならず」がアテにならない件 | 50+(フィフティプラス) http://fiftyplus.jp/2012/07/14/tokiwabash…

無理に金利を統一すると

50+

ここのところ [twitter:@fiftyplusjp] さんに、いくつか記事を書いています。 「時給あたりビッグマック個数」が教えてくれる生き方のヒント http://fiftyplus.jp/2012/06/04/bigmac-per-hour/ 日銀は資産をつくり出せない ― 的外れな「おカネの量」論 http:…

みずほ銀行による非伝統的金融政策の可能性を探る

いや、みずほ銀行である必要は特にないのだが、量的緩和や、あるいは株式の購入のような、非伝統的金融政策に似たアクションは、市中の金融機関でも実行することが可能だというシンプルな例について、すこしだけ書いてみたい。どうにも馬鹿みたいな内容だが…

財政リスクを可視化する

平成22年度「国の財務書類」*1が財務省から報告されたので、例のモダンなバランスシートの姿をアップデートしてみた。必要に応じて、過去の関連記事を参照下さい。 政府のバランスシートを鳥瞰する http://d.hatena.ne.jp/equilibrista/20110130/p1財政リス…

財務省のための国債タイミング戦略 - 増税を頑張る前に

一行にまとめるなら、阿呆みたいに低金利なんだから、もっと出しとけという話だが、他方で財政の将来には、財務省の皆さんを筆頭に不安を見る向きも少なくない。なので、もちろん無駄に使っちゃ駄目で、しかし出し手と受け手とで見通しが異なるとき、裁定の…