成長戦略としての日経225改革

equilibrista2014-12-06

アレイオンは2013年9月25日の取引終了直前の30秒間に、日東電工株に大量の買い注文を出し、不正に株価を釣り上げた。株価への影響が大きかったことから相場操縦に当たると判断した。同日終値は前日比15%(1000円=ストップ)高の7540円だった。


アレイオンが運用していたファンドは不正に株価が釣り上げられた後、事前契約していた証券会社に株式を売却し、少なくとも105億円の利益を上げたとみられる。ただ、不正を主導したアレイオン自体の関与はファンドへの出資比率などに限られるとの計算から、課徴金額は少額にとどまった。


監視委によれば今回の案件は、日経平均株価の採用銘柄入れ替えに際して起きていた。証券会社も調達した日東電工株を同終値で投信運用会社などに売却する契約を事前に結んでいた。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NG3M5M6S972F01.html


むしろ「相場操縦」と表現する方がわかりにくいと思うのだが、翌日から日経平均に組み入れられる予定の株式を先回りして買い、終値で売り抜けたという話である。課徴金が少ないという批判もあるようだが、記事にも書かれているとおり、得をしたのは基本的にはファンドの顧客であってアレイオン自身ではない。では、誰が損をしたのか。一見するとアレイオンに終値を保証した証券会社にも見えるが、そうではない。記事に書かれているとおり、この日の終値に大量の買いが入ることは、あらかじめ決まっていた。そう、黙って日経225をロングし続ける、イノセントなマネーに高く売り渡したわけだ。


すぐに想起されるように、こんなアクションは株価指数の銘柄入替に際しては日常茶飯事であって、アレイオンは単に「派手にやった」という理由で当局*1に怒られてしまった。なぜ派手にやってはいけないのか。要するに掴まされたのは、例えば日経平均ベンチマークとして運用する投資信託の顧客だが、そうした社会的な問題を明らかにしてしまうからだ。賄賂は「静かに」受け取るのがジェントルマンの嗜みだと、ロシアの友人に教わったことがある。昔の話だ。


何が言いたいかといえば、アレイオンを見せしめにしたところで、問題を支える構造は変わらないばかりか、むしろ温存してしまう。今後は別の誰かが、もっと静かに、日経平均インベスターをカモり続けるだろう。言い換えれば、本当の問題は、ある日突然に銘柄を入れ替える日経平均の方にある。パッシブに投資信託を運用する連中だって、別に馬鹿なわけじゃない。カモられることがわかっていても、この阿呆なルールに追随して動くことを、事前に定款で宣言するような商品性というだけだ。


さて、具体的に問題の解決策を探ろう。実に簡単な話で、例えば、ある日突然に銘柄を入れ替えることを止めて、ゆっくりと時間をかけてウェイトを変更させればよい。これだけでも先回りすることの「コスト」は大分増える。細かな技術論は挙げればキリがないが、シンプルなアクションアイテムすら、まだまだ沢山残っている。と、日経225改善案について考えるほど、どうしても自然に、よりよい指数の姿について考えたくなってしまう。時価総額加重平均にして、日々の問題もコストも減らしたくなってしまう。持ち合いを考慮して、浮動株比率を使いたい。本物の大型株指数として、日経平均をピカピカに磨き上げたい。そう思いませんか。


みたいなことを飲み屋の席で伝えると、歴史と伝統と固いアタマを持ち出してきて、新しい指数をつくった方が話が早いですよ野口さんと、日経の連中は言い出す。いやいやいや、そうやって300は失敗したわけですよね。いやいやいや、そうやって1000は失敗したわけですよね。違うんです。日経225は、世界中を見回したって珍しいくらい、既に様々なツールが揃っていて、また巨大な取引も常に絶えない、文字通りビッグなインデックスなわけです。つまり莫大な財産を持ってるわけ。これを活かさないのは、もうね馬鹿みたいに勿体ないわけですよ。


JPX400みたいなツマラン指数は捨てて、大型株指数としての日経225と、1000-225=775の小型株指数をビューティフルに再構成して、ついでにバリュー/グロースと、クオリティ/ジャンクの四象限スタイル指数*2をこしらえませんか。そして日本経済新聞社の抜群に高い能力をフル回転させて、その銘柄群について、1)英語で、2)タイムリーに、情報を発信しまくりませんか。きっとね、世界中の投資家が、今よりも日本に注目するよ。だってね皆、日本語を読めなくて苦労してるわけ。クローニー日本主義の阿吽の呼吸が読めなくて、苦労してるわけ。英語で225本の矢を打ちまくったら、もっと見てくれるよ。もっと買ってくれるよ。社外取締役がどうしたとかスチュワードがどうしたとか、細かい金融立国何チャラみたいなの放っておいても、ガイジンが勝手にガンガン文句言ってくるよ。


といったような成長戦略プログラムの実行に際して、素敵なのは、日本経済新聞社だけのアクションで可能な点である。一社ですよ一社、面倒が一社で済む。え、民間なんだから「政策」じゃないだろって?そんなもの得意の「要請」に決まってるじゃないですか。日本の大型株を、世界に向けて全開にしよう。関係者の皆さん、いつでもご相談承ります。