永久運動の夢、金融政策の希望

永久運動の夢 (ちくま学芸文庫)

永久運動の夢 (ちくま学芸文庫)

永久運動研究家の大多数が、必要な原理の基本的な理解に欠けていたにしても、科学の世界で有名な研究者を含むいくばくかの人は、永久運動を単なる可能性としてではなく、機械を駆動するための動力を人類に提供する手段として、心底信じていたことがわかった。


ちくま学芸文庫は、シビれるタイトルを次々と送り出してくる。表紙の図解を一目見ただけで、衝動買いにブレーキをかけることなんて到底不可能でした。長い長い時間の中で繰り返される数多のチャレンジは紹介され続け、いやでもドラマというか、業のようなものさえ感じられてしまう。

詐欺に走り、永久運動を発見するための探求を、あぶく銭を得る手段と見なした者も少なくない。今日なら、詐欺の確信犯と呼ばれよう。奇妙なことに、詐欺に手を染めた人の多くは、最初は自分で動く力を見つけようとする真っ当な試みとして始めたのであった。


錬金術師と同様に、永久運動を求めた人々は、それに全力を注いだ科学者であった。個人の無知ではなく、その時代に得られていた科学知識や機械知識の限界が足かせとなっていたのだ。こうした人々は概して、その時代に自然だと思われるやりかたで科学を拡張しようとしていたのである。


どうしたって現在の我々が直面する「お金」の問題を想起せざるを得ない。複雑に部品を組み合わせた何ちゃらモデルは、一体どこから力を受けているのか。

永久運動研究家は、まさに自らの失敗によって、今日の知識や科学的理解を前進させたのであり、そのおかげで多くのことが発見された。


「永久運動」を「金融政策」と読み替えてみる。未来に渡る生産と消費のすべては、おそらくエネルギーの保存よりも、すこしだけ確認が難しい。いまだに「景気」さえ、我々は上手に定義できていない。