フロントランニング、リスクプレミアム、モメンタム
大量の取引を、誰かが事前に宣言した*1としよう。あるいは「知ってしまった」と考えてもよい。例えば来月末に、現在50円程で取引されている株を、100円までなら買いまくるといった内容だ。
フロントランニング
投機屋としての我々は、もちろん事前に買い集めたくなる。50円ならもちろんだが、100円よりも少しでも安ければ、100円で買い取ってくれるのなら、両者の差額を手にすることができる。フロントランニングと呼ばれるが、要するに先回りのことだ。
リスクプレミアム
99円でも買うか否か、あるいは99.99円でも買うか否かは、なかなか悩ましい。面倒な作業との見合いは置いておいても、未来のことに「確実」なんて存在しない。だとすれば、その分だけ100円よりも安くないと買う気にならない。リスクプレミアムと呼ばれるが、その「宣言」が不確実であることに起因する価格差である。
モメンタム
もちろん価格差は、「宣言」が実現に近づくほど縮小*2する。順調ならば、99円から100円に向かって、リスクプレミアムは実現を続けるわけだ。このとき同時に、一連の動きを見て、遅刻して乗り込んでくる連中がいる。モメンタムと呼ばれるが、あたかも慣性を持つように、相乗りバスは走り続ける。
わかりやすい例から出発したが、実際には、具体的に情報が入ってくる場合は少ない。あるいは具体性すらリスクを持っていて、その分だけ割り引かざるを得ない。今回の日銀やGPIFでも大まかな金額とスケジュールのみだが、そんなとき上記それぞれの具合は、どんなふうに変化するだろうか。
端的には、フロントランニング成分は減り、リスクプレミアム成分は増えるだろう。もちろん企業が利益を生み出すことに伴うリスクと、さまざまな行動にかかる情報が伝わることに伴うリスクは異なるわけだが、それらをどのように捉え分けて、割り引いて価格を見積もるか。勝負どころである。さまざまなレイヤーで、リスクとプレミアムは、我々のすべてのチャレンジに大きな役割を担う。どんなふうに商売の中でリスクを捉え分けて、割り引いて価格を見積もるか。勝負どころだ。
モメンタムはどうか。マグロの回遊と思ってもよいが、いつの時代も「待ってよー」と遅れてくる奴は消えないだろう。他方でテクノロジーの発達によって、情報の流動性は高まる一方である。「これ何の行列ですか?」「知らずに並んでるのかよ!」みたいなことは、手元の端末で検索できる時代には減っていくのかもしれない。投資のテーマすら、時とともに移り変わっていく。
*1:http://d.hatena.ne.jp/equilibrista/20141101/p1
*2:あるいは非実現に近づくほど拡大