ほしいものをつくったGDP

皆がお金を使わないと、お金が回らないから、よくないんだって。


部分的に正しい指摘を含む、このセリフが食事中に相手の口から出てきたとき、正直戸惑った。これが例えば、政策や経済の理屈にかかる議論の最中なら、いくらでも引き出しを開けて、持ち出す道具の準備はあるものの、そのとき僕は―先週の話だが―何より相手に気に入られたかったからだ。

とても焦って、15秒間を全力でグルグルと回転させ、下記のような例を絞り出した。いま落ち着いて考えれば、もっと他の言い様もあったようにも思うが、単に「そうだね」と答えればよかったのかもしれないが、とにかく頑張った。

とにかく「お金を使うこと」だけが大事なら、こんなふうにしたらどうだろう。まず僕らで大きな輪になって、隣のひとのために穴を掘るんだ。どうして穴を掘るのかって聞かれても困るけど、とにかくスコップで掘る。

それでね、隣のひとが穴を掘ってくれたので、その分のお代を払うんだ。僕は右隣のひとに穴を掘ってあげたので、その分のお代を受け取り、左隣のひとは僕に穴を掘ってくれたので、その分のお代を払う。

そうしてお金がぐるっと回ったとき、僕らは穴を掘る前よりも幸せになったかい?


相手はポカンとしていた。仕方ないので、もう一杯、重ねることにした。