財政リスクを可視化する

平成22年度「国の財務書類」*1財務省から報告されたので、例のモダンなバランスシートの姿をアップデートしてみた。必要に応じて、過去の関連記事を参照下さい。


政府のバランスシートを鳥瞰する
http://d.hatena.ne.jp/equilibrista/20110130/p1

財政リスク方程式
http://d.hatena.ne.jp/equilibrista/20110709/p1


国債は借金じゃない*2と嘯く議員や首長には驚くばかりだが、相変わらず上部に括弧書きした将来に渡るフローの赤字が目立って、貸し手としては重い気持ちになってしまう。これらのアイテムを、それぞれ何倍するのか、もちろん将来予想やその不確実さ、金利環境にも依存するわけだが、控えめに考えて数字を放り込んでも、ズシリと肩に圧し掛かってくるようだ。


平成22年度末 (兆円)
資産負債
[税収等]54xN[行政サービス]89xN
[社会保険料]38xN[社会保障]45xN
米国債89短期債91
財投148財投債118
固定資産183国債641
年金資産116年金負債124
独法他89借入23
次世代への負債419 + 42xNその他47


「年金負債」と明示したそれは、単に積み立てられた「年金資産」に対応するもので、懸念されている将来の年金支払いや、問題になっている生活保護については、45兆円の社会保障支出の定数倍に含まれていると考えていただきたい。さて、前年度との差分を見てみよう。


平成21年度末 (兆円)
資産負債
[税収等]51xN[行政サービス]91xN
[社会保険料]36xN[社会保障]45xN
米国債92短期債97
財投155財投債122
固定資産185国債598
年金資産121年金負債130
独法他94借入22
次世代への負債371 + 49xNその他49


上下にキョロキョロと見比べるのも面倒なので、思い切って丸ごと引き算してみる。ものすごく乱暴だが、包括利益のようなものを表現すると考えていただいても構わない。そもそも刻一刻と変化しているものをバッサリ断面に切り取ったわけだが、季節が巡る一年の短冊は、一日や一秒のそれともまた違って、格別の味わいがある。


差分 (兆円)
資産負債
[税収等]3xN[行政サービス]-2xN
[社会保険料]2xN[社会保障]0xN
米国債-3短期債-6
財投-7財投債-4
固定資産-2国債43
年金資産-5年金負債-6
独法他-5借入1
次世代への負債48 - 7xNその他-2


すこしだけフローは改善したが、大きく変わったのは国債の残高で、じゃじゃーんと借りて次世代への負債を拡大させた。このことが将来の税収や社会保険料を拡大させるのか、残念ながら見えてこない。

*1:http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/national/fy2010/

*2: