みずほ銀行による非伝統的金融政策の可能性を探る

いや、みずほ銀行である必要は特にないのだが、量的緩和や、あるいは株式の購入のような、非伝統的金融政策に似たアクションは、市中の金融機関でも実行することが可能だというシンプルな例について、すこしだけ書いてみたい。どうにも馬鹿みたいな内容だが、すこしだけ。


まず、みずほ銀行は、トマト銀行の持っている国債を買い取ると思おう。

  み 銀     ト 銀
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    |     国債|預金


買い取った代金は、みずほ銀行トマト銀行に支払うわけだが、みずほ銀行に開設されたトマト銀行名義の預金に振り込む形をとる。

  み 銀     ト 銀
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国債|預金 預金|預金


こんな感じだ。みずほ銀行のバランスシートは、トマト銀行から国債を買い取った分だけ大きくなった。一方で、トマト銀行のサイズは変わらない。広義の「マネーの量」は増えた。物価は上昇するだろうか。


チッチキチー、そんなわけないだろ。商店街でレタスを売る八百屋は、国債保有者が変わったり、みずほ銀行のサイズが膨らむことを特に気にしない。商店街でレタスを買うサンドイッチ屋は、あるいはサンドイッチを買う我々は、国債保有者が変わったり、みずほ銀行のサイズが膨らむことを特に気にしない。


また、みずほ銀行は、トマト銀から買い取った国債を売却し、株式を買って価格を吊り上げようと目論むと思おう。

  み 銀     ト 銀
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株式|預金 預金|預金


こんな感じだ。みずほ銀行のバランスシートは、株式を買った分だけリスキーになった。一方で、トマト銀行は、あるいはトマト銀行の預金者は不安になる。株が下がれば、みずほ銀行は損してしまうじゃないか。預金を引き上げたい気持ちになってしまう。あるいは見返りに、もっと利息を寄越せという気持ちになろう。


みずほ銀行を、日本銀行と読み替えてみよう。何も状況は変わらないと感じていただけるだろうか。


そもそもみずほ銀行は、どんなふうに僕らの役に立っているのか。銀行の仕事はさまざまだが、この文脈ではまず、安心して使える預金を提供することだ。では日本銀行は、どんなふうに僕らの役に立っているのか。中銀の仕事はさまざまだが、この文脈ではまず、安心して使える紙幣を提供することだ。ほら、同じことじゃないか。