安倍コノミクスへの対処マニュアル

安倍次期首相が日銀に要求する「大胆な金融緩和」について、慎重派の重鎮の先生方が、ややテクニカルだが骨太なツッコミを相次いで発信された。21世紀にもなって、これほどベーシックなのにホットな話題も珍しいわけで、じゃんじゃん殴り合うのが楽しいと思うのだが、孤高の極北として当ブログも後方からバトルロイヤルに参戦だ。油断するなよ。


金利がある世界に戻るとき(やや技術的) : アゴラ - ライブドアブログ
http://agora-web.jp/archives/1508143.html


池尾さん [twitter:@kazikeo] を乱暴に要約するなら、2%程度のインフレ率が実現すれば、日銀であれ民間であれ、その預金残高を維持するためには金利の引き上げが必要になるだろうと。さもなくば預金の減少が、国債への売却圧力を実現させるだろうという話だ。


なぜいま量的緩和は制限されているのか - 岩本康志のブログ - Yahoo!ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/37776276.html


岩本さん [twitter:@iwmtyss] を乱暴に要約するなら、日銀が長期国債を大量に持つことは、政府と連結で見れば負債の短期化だと。インフレ率が目標に到達するまでには、ゼロ金利政策は解除し預金金利を引き上げることになれば、利払いが増加して困るという話だ。


どちらの話も、そのロジックに全く異論はない。ただピントが外れている。そこじゃねえだろ。両者に共通するのは、預金が逃げ出すことを防ぐためには短期金利の上昇が必要だ、つまり負の実質金利は拡大できないという認識だが、誘導目標を掲げて短期資金の市場を支配しているのは、他ならぬ日銀自身だ。そして慎重派が心配するように、最近の連中は特に、政治圧力に弱い。今日決定会合ですーとか電話したとかしないとか、そんなことが話題になっちゃうくらい弱い。


何が言いたいかといえば、輸入物価の上昇から多少のコスト高が起きたとしても、僕らのような投機屋がカネ借りて何か買っちゃうぞーと踊ったとしても、ネガティブな景況感の下で、日銀が利上げに転じることは容易ではないだろう。実体経済を後押しする必要があるとか嘯いて、連中は日和り続けるだろう。現在の欧米と同じだ。あるいは十年前の我々と同じだ。我々は抗う力を持たず、インフレ税を甘受せざるを得ない。その納税先のことなど考えたくもないが、せめてもの対処マニュアルがあるとすれば、カネを借りることくらいか。


先日のロイター記事*1でも昨日のNHKスペシャル*2でも、変動金利の住宅ローンが危ないなどという的外れな警鐘が鳴らされていた。だが、そんな大胆なアクションを実行できるスーパーマンは、世界中を見回してもボルカー御大くらいのものだ。各国中銀のピヨピヨ総裁達は、不動産がバブって担保価値が上昇するまで、ビビって「引き締め」なんて出来やしないさ。だったら俺達だって、インフレ税を回収しようぜ。


話が逸れてきたが、要するに危ないアブ経済学のネガティブな帰結は、おそらく短期金利の上昇じゃない。放漫財政を懸念した長期金利の上昇と、そのことによって民間の新たな長期資金の調達が阻害されることだ。地球上の他の誰よりも、財政について隅々まで知っている齋藤課長が、わざわざ青い銀行に出向いて丁寧に説明するシーンを、君も観たじゃないか。真っ先に彼の話に耳を傾けろという助言が、新しい内閣への、僕からのプレゼントだ。メリーワルラス