2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

CAPMの逆襲(5) - ブラックの探検

この秋に再びハードカバーで出る*1記念にと、Business Cycles and Equilibrium作者: Fischer Black,Perry Mehrling出版社/メーカー: Wiley発売日: 2009/11/02メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 74回この商品を含むブログ (8件) を見るに目を通して…

日銀理論の矛盾と出口戦略

マネタリーベースは、日本銀行当座預金と現金から構成されていますが、このうち9割を占める現金の発行量は家計や企業のニーズで決まってくるもので、日本銀行が短期的にコントロールすることは困難です。(新しい金融調節方式Q&A) 量的緩和に際して日銀が発…

Black-Litterman(1) - 「ポートフォリオ最適化」の問題点とは

Taejunさんが、ややアカデミックな展開をされそうなので、こちらでは「実際にやってみる」的な内容で、併走してみたいと思います。 さて、よくいう「ポートフォリオ最適化」を実際に行おうとすれば、すぐに問題に直面し、立ち止まらざるを得ません。「期待リ…

封筒問題とシーゲルの逆説

id:ROYGB:20090805やid:kojette:20090811:1249917024で語られている「封筒問題」と、id:equilibrista:20090617でご紹介した「シーゲルの逆説」は、よく似ています。 封筒問題 いま2つの封筒があって、片方にはもう片方の倍の金額が入っている。最初にどちら…

日記

TaejunomicsのTaejunさんと初めてお会いし、飲んできました。CAPMについて真剣に議論する機会を持てたことは何より嬉しく、リスクプレミアムが高過ぎる謎、Black-Litterman、マイクロファイナンスとインセンティブ、「待つことの見返り」*1、バランスシート…

小さな日銀

このひとの発言は、いつもシビれる。 UPDATE2: 水野日銀審議委員記者会見の一問一答 | マネーニュース | 最新経済ニュース | Reuters http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK029470520090820 もうひとつ個人的に注目しているのは、財とサービス…

インフレーションを整理する

「インフレーションは、需給と信用という2つのコンポーネントから成る」というのが当ブログの立場だが、わかりやすく整理するために表にしてみた。 貨幣の信用リスクで物価が上昇するしない活発な消費と生産で物価が上昇する(A)(B)しない(C)(D) 物価が緩やか…

生命保険は「自分が死ぬ方に賭ける博打」か

生命保険のような複雑な商品を肌感覚で理解するためのきっかけとして、博打のような身近でシンプルな例と重ね合わせてみる方法はとても有効ですが、両者には異なる趣もあります。そのあたりを今日は明らかにしてみたい。キーワードは、「効用」と「リスクプ…

高頻度取引とは何か

「高頻度取引」あるいは"HFT"で検索して来られる方が多いようなので、先日のウォールストリートジャーナルに載ってたQ&Aをざっと訳してみる。 What's Behind High-Frequency Trading - WSJ.com http://online.wsj.com/article/SB124908601669298293.html Q: …

誰もが高頻度取引できる市場を新たにつくろう

下記エントリのおっしゃるとおり、ゴールドマンが儲かってるのは、高頻度取引*1だけでなくクレジット関係の好調が大きいのではないかとも思うが、ともあれHFTについて興味と誤解が渦巻いているようなので、波乗りしたい。 Murray Hill Journal: ゴールドマン…

CAPMの逆襲(4) - MM定理を自然に拡張する

モジリアニとミラーの定理*1ってのは、もう50年も前に発表された、「資金調達の方法によって、企業の価値は変わらない」という、よく考えてみると当たり前だが、素晴らしく画期的で、かつ刺激的な議論である。どんなものか、超簡単に例示しよう。企業が新た…

アクティブな金融政策が「勝ち続ける」理由は見つからない

政策・在庫調整効果一巡後の最終需要にまだ確信持てず=日銀総裁 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-10497420090811 「政策」金利なんて不要だと思う。白川総裁が最終需要の強さに確信が持てなくとも、株価も商品も世界中で暴騰している。為…

CAPMの逆襲(3) - どうして株は上がるのか

株は上がります。このことを確信を持って理解されている方は、どうも思ったよりも少ないように感じられますので、再び強調しておきます。株は上がります。例えば日経平均株価は、いつか必ず間違いなく、10万円を超える日が来ます。 もちろん1万円の銀行預金…

トヨタの背理法

「もし、トヨタが社債を発行し、その資金で国債をいくら購入したとしても格下げにはならない」と仮定する。すると、市中の国債や政府発行の新規発行国債をトヨタがすべて買い取ったとしても、格下げが起きないことになる。そうなれば、政府は物価や金利の上…

各道州が特徴を生かして発展するために

何度も書き散らかしてきている持論なのだが、なるべく簡潔にまとめたい。 円を廃止し、道州はそれぞれに独自の通貨を使う それぞれの金利と為替レートは、需要と供給によって決まる 1)は面倒そうだが、日々の負担はテクノロジーが軽減する*1だろう。2)が狙い…

バングラデッシュの畜産が米国株式リターンを極めて正確に予測する理由

最近出た本*1の紹介記事のようなのだが、なかなか面白かったので引用してみる。 Data Mining Isn't Good Bet for Investors - WSJ.com http://online.wsj.com/article/SB124967937642715417.html Mr. Leinweber got so frustrated by "irresponsible" data m…

CAPMの逆襲(2) - 誰がリスク負担の見返りを払うのか

表が出たら100円を貰うことのできるコイン投げゲームに、いくらでなら参加しますか? すこし前に、知人に聞いて回ってみたことがあります。クイズじゃなくてアンケートだと言ってるのに、「正解」を探そうとするひとが多くて驚いたのですが、「タダならやる…

雇用の短期化は将来への備えを要求する

雇用契約が終身のとき、賃金はどのように決まるだろうか。おそらく、彼が一生をかけて生み出す利益の現在価値を、分割で払う形になるのだろう。分割の払い方は自由だ。均等でもよいし、年齢に応じて昇給させてもよい。 雇用契約が5年のとき、賃金はどのよう…

肩たたき券のバブル崩壊

といっても、面白可笑しいエピソードの紹介ではなく、シンプルな例示に過ぎないのですが、誰もが子供の頃に発行した覚えがあるんじゃないかと。肩たたき券。実際のところ、誰もが発行したことのある有価証券てのは、さほど多くないはずで、頭数ベースのカバ…

GDP成長率と失業率、そして株価の関係

さて、今日も乱暴に大雑把に、とにかく鳥瞰したい。で、GDP成長率ってのは要するにフローの伸びのことだが、最も原始的な株価モデル*1では、おそらくそれは利益と、そして割引率を構成する無リスク金利とを変化させるだろう。どんなふうに変化させるかといえ…

最低賃金と失業率、そして効用と尊厳

最低賃金で働く労働者にとって、その水準が引き上げられれば給料が増えて嬉しいかもしれないが、失業してしまうリスクも増えるだろう。馬鹿みたいな例だが、企業が人件費として100円で2人分なら出せると考えているとき、最低賃金が200円になれば1人しか雇用…