Black-Litterman(1) - 「ポートフォリオ最適化」の問題点とは

Taejunさんが、ややアカデミックな展開をされそうなので、こちらでは「実際にやってみる」的な内容で、併走してみたいと思います。


さて、よくいう「ポートフォリオ最適化」を実際に行おうとすれば、すぐに問題に直面し、立ち止まらざるを得ません。「期待リターン」と「推定リスク」を、取引しようとする各資産に対して*1事前に決め、「最適な」組み合わせを探るべく計算をするわけですが、それらをどんなに慎重に決めても、金額合計の上限を設けたり空売りを禁止する制約条件下では特に、馬鹿みたいに極端な解になってしまいがちです。例えば、100円まで投資するときの最適解は、「全部米国債を買っておけ」みたいになっちゃう。


あれ、それじゃ困ると。僕が欲しているのはそういう答えじゃないと、少し事前の設定をいじってみます。どうも米国債の期待リターンが高すぎたようなので、ちょっと下げようと、コンマ何パーセント変えてみる。他の資産に関しても、バランスを考えてちょいちょいと修正して、再びガラガラポンと回す。そうすると今度は、「だったら全部ユーロにしときなさいよ」と、そういう具合に変化しちゃう。要するに初期条件の変化に対して、結果が過敏です。


で、Taejunさんも指摘されるように、一般的には、これを「調整」するために、(恣意的な)制約条件を設けたりします。例えば一番簡単には、「米国債は最大4割までね」「ユーロも最大4割までね」とか設定しておく。そうすれば当然のことながら、それなりの結果になります。しかしながら先ほど括弧書きしたように、そんなもの恣意的なわけです。あらゆる調整は、主観に基づいて行われざるを得ません。それでは一体何のために、「最適化」しているのか、よくわからなくなります。自分がこうあってほしいと思う結果に似せるために、「調整」された「最適化」、諸行無常の響きあり。だったら最初から、勘でポジションを直接的に決めなさいよと。


CAPMからスタートしてみろ」


この枠組みは、ブラックの一言から始まったそうです。1990年に初めて発表されるBlackとLittermanの仕事は、こうしてマーコヴィッツの最適化とシャープとリントナーのCAPMを引き合わせます。それは技術論と捉えられがちですが、取り組み考えるほど、ある種の世界観として自分の中で昇華されざるを得ません。

*1:リスクに関しては、資産間の共分散も含めて