高頻度取引とは何か

「高頻度取引」あるいは"HFT"で検索して来られる方が多いようなので、先日のウォールストリートジャーナルに載ってたQ&Aをざっと訳してみる。


What's Behind High-Frequency Trading - WSJ.com
http://online.wsj.com/article/SB124908601669298293.html

Q: 高頻度取引って何?

A: 定義はいろいろあるけどさ、基本的にはスピードだよな。超速いコンピュータを使って、ものすごい勢いで取引するわけ。目的と手法は様々で、市場を動かす「シグナル」を探して、金利とかさ、それで株やら通貨やらコモディティやらの、すぐ消えちゃうような動きを追ったり、取引インフラのちょっとした癖から、失敬しちまおうとしたりさ。
買い注文と売り注文を繋ぐ、「マーケットメーカー」もいるな。もちろん、いろいろ兼ねてる奴だっている。

Q: 高頻度取引で、どうやって稼ぐの?

A: 多くの連中は、数セントだとか、ちっこい利益をたくさん集めてくるわけよ。一時的な「非効率」を探しまくって、その変な値段が消えちまう前に獲ろうって話だ。
マーケットメーカーは、買いと売りの価格差で儲けようとするんだ。ビッド・アスク・スプレッドって奴だな。売買の両側と取引してさ。多くの取引所じゃ、そいつらに一株あたり3分の1セントとかのリベートを用意するんだ。取引したい投資家の役に立ってるからな。

Q: 高頻度取引でビッグなプレイヤーは誰だい?

A: 有名な奴から知られてない奴まで、沢山いるけどな。Goldman Sachs Group Inc.とか、シカゴのCitadel Investment Group LLCとかってのが代表選手かな。超速トレーディングのイノベーターは、Renaissance Technologies LLCってヘッジファンドだ。
それから1999年にシカゴで設立されたGetco LLCって連中は、世界中の取引所でマーケットメーカーをしてるな。その他には、Jane Street Capital LLCだとか、Hudson River Trading LLC、Wolverine Trading LLC、それからJump Trading LLCなんてのもいるな。

Q: どうして人々は高頻度取引に関心があるの?

A: トレーディングの世界じゃ、高頻度取引ってのは去年スゲーうまくいったから、皆気にしてるんだよ。加えて最近だと、元ゴールドマンの奴がそれ用のコードを盗んだってFBIに捕まったろ?
それから、出来高が随分と膨らんでるってのもあるな。今や米国株の取引の半分以上は高頻度取引だって言われてる。取引所もそれで儲かってるしな。ニューヨーク証券取引所のオーナーは、高頻度取引する連中にデータセンターを提供するってさ。

Q: フラッシュオーダーって何?どうして議論になってるの?

A: 取引所はさ、いま出てる売りや買いの注文に対して反応した奴からフィーを取って、元の注文を出してた奴にリベートを返すわけ。そういう仕組みなら、リベート稼ごうって気になるじゃない。そこにこの話が入ってくる。
こいつはさ、取引所に注文をコンマ5秒までキープしておけますよって仕組みなわけ。それ以上置いとくと、他の取引所に出てる同じ銘柄の注文と合わせられちゃうんだけど、それだと「反応した」側になっちゃうだろ?そうなる前に、誰かその取引を必要としてる奴が現れるのを待つ余裕があるわけで、この仕組みはフラッシュオーダー屋がリベートを取れるチャンスを増やすわけだ。一方で取引所は、こいつを使って取引を増やしてシェアを取ろうとしてる。
当局は、スゲー速いコンピュータ技術を持った悪徳業者が、市場価格に影響を与えることを心配してるみたいだな。

Q: もしフラッシュオーダーが禁止されたら誰が損するの?

A: もし偉いさん達がそう決断するなら、こいつを利用して高頻度取引してる連中の利益はなくなっちまうだろうな。擁護派の中には、取引所の出来高が減って、より不透明な、わけのわからないやり方が増えちまうって言う奴もいるよ。

Q: 「裸のアクセス」って何?どうして議論になってるの?

A: ブローカーは、高頻度取引の連中に自分のアクセスコードを使わせて、取引所に直接アクセスするのを許してんだよ。もちろん多くのブローカーは、奴らが何してんのか監視してるよ。ただSECに言わせると放任してる連中もいるんだと。「裸のアクセス」ってのは、そういうことさ。評論家は、悪党共が市場を不安定にさせるんじゃないかと心配してるな。ちゃんと監視しないと、また世界中を暴落させるかもしれないってさ。

Q: 小さな投資家にも影響はあるの?

A: 高頻度取引は、出来高を生み出してるし、取引のコストを下げてるって支持者は訴えてるな。例えば投資信託がグーグルを10,000株買いたいと思ったとき、その値段は高頻度な連中の肩にかかってる。
評論家は、トレーダーが値段を吊り上げて、高い買い物させられるんじゃないかって心配してる。それと、連中に返されるリベートは、結局のところ投資家が払ってるわけだしな。

Q: 自分でも気づかないうちに高頻度トレーダーになってるってことある?

A: オンラインブローカーもフルサービスなブローカーも皆、売買を超速く捌く取引プラットフォームとそのためのサーバーを抱えてるから、注文は効率的に処理できてるよな。でも普通は、マーケットから小さなシグナル見つけてきて高頻度取引するとか、そういう高度な戦略を使ってるわけじゃないと思うぜ。


他にもこれ*1とか、検索すれば解説や意見はザクザク出てくるのだが、昨日書いたとおりで、誰を責めようだとか、こうある「べき」だとか、そういう話じゃないと思う。とはいえ、よりよい市場のあり方を考えるとき、どうしても自分で透明で公平なそれをつくりたくなってしまう。東京証券取引所は大きな利権のひとつなわけだが、ベンチャーでそれに立ち向かうってのは、最高に資本主義なエキサイティングじゃないか。誰か一緒にやろうぜ?