「コミットメント」

600億円というのは実に驚く金額だが、ソフトバンク孫さんの後継者だそうだが、自社株を買うと昨日報道があった。正直ピンと来ない大きさだが、さほど興味があるわけでもないのだが、最近あまり書いていないのでリハビリです。さらっと。


ソフトバンクのアローラ副社長、自社株600億円を個人購入
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL19HBH_Z10C15A8000000/

アローラ氏の株式購入資金の出どころについてソフトバンクは「個人のプライバシーにかかわること」として明らかにしていない。


コツコツ郵便貯金から軽く出てくるサイズとも思えないので、いろいろ事情はあるのだろうが、今日のポイントはここじゃない。経営者が自社株を買うことは、「コミットメント」を示すものとして歓迎されるそうだが、そんなに望ましいことだろうか。


経営がうまくいけば株価も上がるだろうから、その分やる気が出るでしょという、シンプルな話なのだろう。が、言い換えれば、経営がうまくいかなければ株価は下がるだろうと思えば、そのとき踏んだり蹴ったり*1である。職を追われ、評判とともに資産まで減らしてしまう。「背水の陣を敷け」と外野が騒ぐ精神論の太鼓が、市場の底から聴こえてこないだろうか。


もちろん、そうして自分を鼓舞するタイプの経営者を否定するものではない。俺は天下を獲ると、一歩さえ引くものかと、向こう見ずの勇者に望みを託したくなる、液晶スクリーン前の投資家を否定するものでもない。「私自身も買っています」てのは詐欺の常套台詞ですよと、茶化したいわけでもない。単に、違うタイプの経営者が居てもいいよねと。私にも家族が居ますのでと、生活まで生贄にするのは抵抗がありますと。しかし同時に高い能力や運を備えた、結果として優秀な経営者が存在するだろうことを否定するのは困難である。あるいは精神論が大流行して、リスクの分業を割り切ったマネージャが割安になれば、積極的に仕事を頼むこともやぶさかでない。そう思われないだろうか。


似たようなことが、投資信託ヘッジファンドの運用者にも言われることがある一方で、投資の理屈について思いを馳せれば、自らの商売リスクと相関の高い投資リスクを積極的に負担する理由は見つからず、目的はマーケティングにも思えてくる。「フィービジネスに徹する」ことと精神論との齟齬について、あるいは巧妙な広告について、CAPMの文脈から語るのが好きだ。

*1:踏まれたり蹴られたりの方が正確だ