死亡率リスクのプレミアム水準を探る

id:actuary_mathさんから、コメントとトラックバックを頂いた。本職の方だ。標準生命表の使用は、業法上は、負債計上の際に求められているのであって、保険料決定の根拠となる必要はないとのこと。もちろん、だからといって低めの死亡率を用いれば、保険契約を受けるだけで会計上の損失が発生してしまうことになる。より大切なご指摘は、たとえ大筋で正しくとも、主張の信頼性を高めるためには、正確さが必要との点で、id:equilibrista:20100402:p1の補足として、付け加えておきたい。深く感謝します。


さて、死亡率リスクの「安全割増」の水準は、本当に大き過ぎるのか、ゼロが理想なのか、いくらであるべきなのか、様々な意見があるだろう。また、仮にゼロでないとすれば、誰がそれを負担すべきなのか。これは、より大切な論点だ。ここが明らかにならなければ、死差益の処理など考えられるはずもない。で、もちろん僕は、他のあらゆるリスクと同じように、それを望む者がリスクを負担し、同時にプレミアムを受け取ればよいと考えている。仕組みを考えてみた。とても簡単だ。死亡率リスクに投資するファンドをつくればよい。


(想定した死亡率 - 実際の死亡率) x 保険金額


代表的な死差益は、年齢別男女別に、上記のように初等的に決まる。変数は実際の死亡率だけで、その標本分散が依存する契約の数も、事前に定義することができる。リスクを負担する者、つまりファンドに投資する者は、実際の死亡率が事前の想定を下回ったときに、これに対応する利益を受け取り、逆に想定を上回ったときに、これに対応する損失を負担する。このファンドが市場で取引されるとき、その価格は、市場参加者の総意としての死亡率リスクのプレミアム水準を表現している。


現状とは随分距離のある、不特定多数がリスクを負担する形で表現してしまったが、もちろん、他にも沢山の手法があり得る。再保険のような形で、同業他社に渡してもよいし、スワップ契約で、ヘッジファンドに売ってもよい。要するに、「儲かりすぎ」ている死差益を、ほしいひとは世の中に沢山いるのだから、だったら売り渡してしまえばよいのだ。このとき死亡率リスクとプレミアムは、保険契約者から切り離され、保険料はいまよりもずっと安くなるだろうし、保険会社は死亡率リスクから開放され、また投資家はポートフォリオのリスク分散ができる。いいことだらけだ。


というわけで、経営企画に関わるアクチュアリーの皆さん、金融庁の皆さん、上記のようなスキームづくり、いつでもご相談承っております。