Black-Litterman(2) - 見通しの最適配分

私的で熱狂的な勉強会を @TaejunShin @takashifc らと、繰り広げた休日はもう普通じゃなくエキサイティングで、徹底した論理のトンネルをくぐった向こう側に、隠れていた現実を見つける喜びは、いつでも他の何にも替え難いものです。今回のテーマは、Black-Littermanモデル。特に制約がないときには、投資家の保有するポートフォリオは、市場ポートフォリオと見通しポートフォリオの線型和になるという事実を確認したのだが、数式をちゃんと読むのは面倒だし、ここでは細かな議論を展開するよりも、最適解の暗示するものを言葉で、なるべく直感的に表現してみたい。


W* = Weq + PT[Ω/τ + PΣPT]-1[Q/δ - PΣWeq]


市場ポートフォリオWeqと、これを構成する各リスク資産のリターンにかかる共分散行列Σは誰もに共通し、主観的な見通しポートフォリオ群P、それぞれの見通しに期待するリターンQとその共分散行列Ωと、それぞれをスケールするパラメータδとτでもって、最適解はこんなふうに表現されるわけだが、もちろん右辺第二項に注目したい。複数の見通しポートフォリオが線型和されるそのウェイトは、リターンのベクトルとリスクの行列とで構成される、やはり最適解の形をしている。


分子では、それぞれの見通しへの期待を、ベータ分を差し引くことによって調整する。野村證券のロングと武田薬品のショートの組み合わせに期待するリターンは、少なからず市場リスクそのものを含んでいるでしょと、そういう指摘だ。分母では、見通し群に考えるリスク行列Ωを、誰もに共通するΣによって捉えられるリスクと折衷する。要するにどちらも、いわゆる均衡と自分との綱引きだ。


こうして構成された期待とリスクによる最適解を、見通しポートフォリオの配分とする戦略は、もう僕には当たり前にしか見えないのだが、しかし、歴史上のあらゆる大きな発見は常に、我々がまだ見たことのない「当たり前」だった。そのひとつが頭の中に具体的に表現された今、そもそも見通しって何だろうと、ここ数日考えている。


もちろん勉強会は、まだまだ果てしなく続きます。次回はリスクプレミアムのパズル*1で、やっぱり最高にエキサイティングなテーマ。え、Black-Littermanの細かな話?そういうのは、飲み屋のカウンターで紙と鉛筆持って、無粋にシコシコやりましょう。