CAPMの別の表現
Black-Littermanのプライヤー、いわゆる均衡期待リターンについて、実はCAPMそのものなわけだが、そのことがパッと見てよくわからないという指摘を複数いただいた。ので、すこし丁寧に書いてみようと思う。算術なので、「なんとなくわかる」方は、特に読む必要はないです。
投資家の平均的なリスク回避度をδ、リスク資産にかかるリターンの共分散をΣとしたとき、市場ポートフォリオweqをマーコヴィッツの問題の解として返すには、リスクプレミアムμが要求されているはずだと、逆向きに考えるわけだが、こうして日本語で書けば、既にCAPMのコンセプトだ。同じことだが、こんなふうに「最適解」として書いた方が親しみが湧くかもしれない。
さて、こいつがよく見慣れた形と正確に同じものを表現していることを、順に追って見ていこう。一般には、こんなふうに覚えられているだろうか。
βiはここで、市場ポートフォリオのリスクによって調整された共分散だったことを思い出そう。要するに、マージナルなリスクだ。
両者を合わせて、ある銘柄iに期待されるリターンも、市場ポートフォリオに期待されるリターンも、どちらも無リスク金利からの超過分と思う。
そうしてリスクプレミアムの世界で物事を考える方が、スッキリする。ここでは小文字のrをそれと思って、置き換えてしまえ。
銘柄iに要求されるリスクプレミアムについて整理したわけだが、いっそのこと全銘柄を並べて、ベクトルにしてしまおう。もちろんrm/σm2はスカラーだが、皆に共通している。
さて、市場ポートフォリオのリスクプレミアムは、各銘柄のそれを、それぞれの大きさに応じて足し合わせたものだ。
右辺の共分散をそれぞれ、そうして分解してみよう。もちろん、各銘柄ウェイトの集合としての市場ポートフォリオを括り出したい下心がある。
分配法則に従って共分散を解きほぐし、ウェイトを頭出しすれば、うっすらとゴールが見えてきた。
市場ポートフォリオを外に出し、見やすさのためにCovをσと書き換えよう。ほうらできた。
もちろんリスクプレミアムのベクトルをμ、共分散行列をΣ、ウェイトのベクトルをweq、そしてδを読み替えれば、めでたく最初の式だ。嬉しい。リスク回避度とは、分散で計った市場ポートフォリオのリスクに対して、我々が要求するプレミアムのことだった。実にしっくりくるじゃないか。
僕自身も左右を確認しながら、ちまちまと書き綴ってきたわけだが、こんなふうにリスクの視点で追いかけると、チャレンジする世界がベクトル空間にも思えてきませんか。