answer 技術解説

equilibrista2015-01-14

個人投資家ポートフォリオ構築のために、保有する投資信託を分析し、追加購入の候補を表示するアプリケーション answer が発表されました。おそらく、あまり目にされたことのない先進的な枠組みとなっていますが、そのエンジン部分について、微力ながら協力させていただきました。技術的側面から、簡単に解説してみたいと思います。


http://answer.monex.co.jp/
https://itunes.apple.com/jp/app/id942399878


ポートフォリオのリスク分析と取引候補の抽出プログラムは、大きく分けて3つのコンポーネントから成ります。

1) リスク要因への分解

投資信託を銘柄毎に、例えば国内株式や新興通貨といった形の、典型的なリスク要因へと分解します。カテゴリに「分類」するのでなく、既知のリスク要因の組み合わせとして捉えることで、共通する部分を括り出しつつ、各銘柄の性格を大きく把握します。

投資信託\リスク要因 米国株 米国債 米ドル
米国株(ヘッジあり) 1 0 0
米国株(ヘッジなし) 1 0 1
米国債(ヘッジあり) 0 1 0
米国債(ヘッジなし) 0 1 1

2) Black-Litterman

市場ポートフォリオを構成する各リスク要因は、それぞれに均衡「期待リターン」を持ち、同時に投資家は、例えば株式には強気、あるいは外国債券には弱気といった形で、それぞれに主観的な見通しを表現します。

E(R) = [(τΣ)-1 + PTΩ-1P]-1[δ/τWeq + PTΩ-1Q]

3) 銘柄毎の評価

新たな投資信託の組み入れは、ポートフォリオの期待リターンおよびリスクを、同時に変化させます。現在のポートフォリオに対して、追加的に組み入れる際の効用の変化について、銘柄毎に評価します。

dU/dW = F⋅E(R) - δFΣFTW


これらの機能を組み合わせることで、リスク分散され、またベイズ的に投資家の見方を反映したポートフォリオ構築を助ける、特徴あるプログラムを構成しています。投資家は、候補として表示される銘柄の中から好みのものを選び、順次組み入れていくことで、ポートフォリオの効率は徐々に高まります。


マーコヴィッツの「最適ポートフォリオ」から60年、明確な概念も実際の行動に移す際には、思考と試行のステップを必要としました。ここでは限界的寄与の概念を、効用と銘柄のレベルにまで落とすことで、より使いやすい道具を目指しました。