Fama-FrenchあるいはAPTは、どのようにCAPMと矛盾しないか

equilibrista2013-05-29

たったひとつのファクターが株価を表現するだなんて、そんなの無理があるだろと、どうしても探る手足を増やしたくなる一方で、たったひとつのファクターによるモデルとしてのCAPMは、そのすべてを包含する。ちょっと何を言っているかわからないかもしれないが、さっさと結論から書こう。n個の銘柄それぞれについて、k個のファクターのエクスポージャをnxk行列B、またk個のファクターにかかるkxk共分散行列をΛ、市場ポートフォリオをnx1ベクトルWeqとするとき、nx1ベクトルWで表現される任意のポートフォリオにかかるベータは、以下のように表現される。


WeqTBΛBTW / WeqTBΛBTWeq


分子は市場ポートフォリオとWとの共分散、分母は市場ポートフォリオの分散で、教科書通りの形だ。そもそもベータは何を表現するのかという話だが、任意の(ポートフォリオの)リスクに対して、投資家が「事前に」要求するプレミアムの水準は、市場ポートフォリオに対する「追加的な」リスクを参照する。k個のファクターのひとつとして、ベータそのものを持ち出す(特殊な)場合には、これに直交するように他のファクターを選べばFama-Frenchの形となるわけだ。


rt - rft = α + β1MKTt + β2SMBt + β3HMLt + β4UMDt + β5BABt + β6QMJt + εt


なぜ突然こんな話をするのかと言えば、バフェットロボについて書いた記事*1の中で、6つのファクターが出現したからである。ここではFama-Frenchに加えて、4番目にモメンタム、5番目にベータ選好、6番目にクオリティを登場させる。Barra社のそれに近づきつつある気もするが、ともあれ複数のファクターを持ち出したくなるのは自然なことで、それぞれに対して見通しを持つとき、投資家の行動について記述するのがBlack-Litterman*2だが、複数のファクターは本質的に市場が決めるものだと思えば、リスクの取引に現われる固有値問題*3に直面する。


FOLIO(フォリオ) vol.2

FOLIO(フォリオ) vol.2


というわけで、FOLIO第二号が出たようです。僕も買いましたが、今回は不動産について。書き手の皆さん、とても尖っていて面白いです。