スマートなリバランス

例えばGPIFが公表している現在の資産構成割合*1を見ると、目標とする「基本ポートフォリオ」から乖離しています。ほとんどあらゆるポートフォリオで、その目標と、現在の資産配分とは異なります。もちろん、特段の目標を持たないポートフォリオも存在するわけですが、そこに「もうちょっと株を持とうかな」みたいな判断があるとすれば、目標の具体的な姿は横に置いておいても、その変更と捉えることはおかしくありません。今日は、そうした目標と現状との乖離を、上手に取り扱う方法について書いてみます。


現在目標
国内債30.48%35.00%
国内株24.41%25.00%
国債13.53%15.00%
外国株23.91%25.00%


一般に(ある資産を売って別の資産を買う)リバランスの手間は、決して安くありません。間違えるかもしれないし、取引はドキドキするし、何よりも面倒くさい。一方で、毎日を生きて暮らす我々には、通常キャッシュの出入りがあるわけで、これは面倒だろうが、いずれ避けられません。だとすれば、そうしたフローを配分の調整に利用すれば、手間が相殺されて嬉しい。というわけで、目標と現状とを比較し、もっとも乖離の大きなところにフローを合わせるのは、よくあるやり方です。国内債が少ないときに入金なら、国内債を買う。外国株が多いときに出金なら、外国株を売る。ただ、いやそれ何というか、もうちょっと上手くやれると思うぜ。


現在目標乖離
国内債30.48%35.00%-4.52%←これを買いたくなる
国内株24.41%25.00%-0.59%
国債13.53%15.00%-1.47%
外国株23.91%25.00%-1.09%


というのは例えば、株式の配分が目標よりも5%だけズレていることと、債券の配分が目標よりも5%だけズレていることでは、だいぶ影響が異なるわけです。要するに前者の方が、成果が目標から離れてしまうリスクが、だいぶ大きい。当然、そうした各資産の性質を考慮に入れつつ、配分の乖離について評価したくなります。どうすればよいだろう。現在の状態から、国内債を買って増やすときに、変化するリスクを評価してみる。現在の状態から、外国株を売って減らすときに、変化するリスクを評価してみる。えい。


現在目標乖離共分散∂リスク
/∂配分
国内債30.48%35.00%-4.52%0.16%-0.04%
国内株24.41%25.00%-0.59%0.08%4.00%-0.22%
国債13.53%15.00%-1.47%0.08%0.00%1.14%-0.16%
外国株23.91%25.00%-1.09%0.00%1.60%1.06%3.56%-0.32%←これを買うとリスクが減る


更に前進できます。乖離しているといっても通常は、1)意図的なそれと、2)意図しないそれが、混在しているはずです。国内株への配分がちょっとだけ多いとき、そこには特に意図しない部分もあれば、意図して国内株を増えたままにしている、つまり強い見通しを表現している部分もあるはずです。そんなときリバランスにも、そうした意図を考慮したい。現在の状態から、各資産を取引しようとする際に、1)変化するリスクに加えて、2)期待しているリターンについて考える。両方いっぺんに考えるんだから、要するに効用だ。現在の状態から、国内債を買って増やすときに、変化する効用を評価してみる。現在の状態から、外国株を売って減らすときに、変化する効用を評価してみる。


現在目標乖離共分散∂リスク
/∂配分
期待∂効用
/∂配分
国内債30.48%35.00%-4.52%0.16%-0.04%0.00%0.04%
国内株24.41%25.00%-0.59%0.08%4.00%-0.22%0.00%0.22%←これを買うと効用が増える
国債13.53%15.00%-1.47%0.08%0.00%1.14%-0.16%0.00%0.16%
外国株23.91%25.00%-1.09%0.00%1.60%1.06%3.56%-0.32%-0.20%0.12%


というスマートなリバランス技術を内側に装備した、投資アドバイスのサービス*2が新たに世に出ました。ほんのすこし、こうした部分だけ、お手伝いさせていただきましたので、ささやかに紹介します。