ユーロ分裂案

ユーロ分裂案に3000万円 英シンクタンクが公募 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111020/fnc11102010060014-n1.htm

「ユーロから脱退する国が出るとの観測は多くあるのに、実際の脱退に伴う問題についての研究はほとんどない」
「ユーロを脱退する際、国内の預金や借金の新通貨への評価替えをどうするか」
「脱退の発表は突然するべきか、時間をかけて発信するべきか」


できたよ。とてもシンプルな案が。中銀バランスシートを透視するコンテンポラリーな奴だ。
さて、まずは現状から。「欧州債」って一体何だと、乱暴だと感じられるかもしれないが、要するに現在のECBの資産側だと思って下さい。


欧州債ユーロ


第一に、負債としてのマネーを便宜的に分割する。発行体は同じまま、紙幣のデザインや預金の名称を変えるという話だ。しかし分裂するドイツとギリシャの政府は、それぞれマルクとドラクマでの納税を要求する。なので、ドイツやギリシャで経済活動を行う者は、それらを常に準備する必要に迫られる。これで量が決まるってわけだ。


欧州債マルク
ユーロ
ドラクマ


第二に中銀の分割だが、資産側は同じ構造のまま輪切りにする。この時点で独自の金融政策が可能になり、交換レートは動き出す。が、以降のアクションについて、そのタイムラインを明確にはしないことが肝要だ。


欧州債マルク
欧州債ユーロ
欧州債ドラクマ


資産構成が変わらなければ、あるいはいつ変わるのか明らかでなければ、投機屋はマルクを買い上げることも、ドラクマを売り浴びせることも難しい。例えば何年もこのままなら、各中銀の資産が生み出す利益は金太郎飴で、異なる金利水準に誘導することも簡単でなければ、クレジットに差がつく理由もない。


ドイツ債/
欧州債
マルク
欧州債ユーロ
欧州債/
ギリシャ
ドラクマ


とはいえ独自に中銀を持ち、その負債での納税を要求し用意させるわけで、(かつての同胞ではあるものの)他国に貸し出す義理は大きくない。ドイツ中銀とギリシャ中銀は、それぞれに(財政ファイナンスを要求するだろう)政府からの「独立性」を持ちながらも、徐々に自国への貸し出しにシフトさせる。独自の(徴税力を担保にした)国債保有、独自の金利政策、独自のクレジットとともに、交換レートもアクティブに動き出すことになる。


ドイツ債マルク
欧州債ユーロ
ギリシャドラクマ


そして最終形だ。ドイツ中銀がフランス債を買う理由や、あるいはギリシャ中銀がオランダ債を買う理由は、ゼロではないものの、その国で皆が用いるマネーによる資金調達は、その国に供されることになるだろう。もちろん欧州以外の地域の中銀と同じように、政府からの独立性を高らかに宣言し、状況に応じてリスクを抑えていく意欲とアクションは、当該国の預金者のために必須であることは言うまでもない。


どうでしょう。皆さんの腑に落ちたろうか。さて、僕はコンペに応募するつもりはありません。なので上記のプロセス、パクっていただいて結構です。でもさ、こんなもの誰が考えても、結局のところ大枠では、似たようなものになるはずなんだ。僕らはシステムをつくり出すことなんて出来ない。ただ発見するだけ、そして自分の言葉に翻訳するだけだ。より大切なのは、本当に神が宿る「現場」なんだ。細かな毎日の連続さ。


ヘイ欧州、だから俺を雇いなよ。安くしとくよ。