通貨の「裏付け」と分別管理の心

「裏付け」だとか何チャラ本位制だとか、どこかで聞いたような用語を言っときゃいいんだろ的な、雑な見解に溢れた世の中だって悪くないと思えるのは、それが闇雲な競争だとしても、そこに需要がある限りいつか質は向上せざるを得ないはずで、つまり参戦しようという気にさせてくれるからだ。


ベネズエラは仮想通貨を導入へ、ボリバル急落の中で大統領が方針表明 - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-12-04/P0F1HF6JIJUY01

マドゥロ大統領は3日に国営テレビで、同国が石油や天然ガス、金、ダイヤモンドの準備を裏付けとした仮想通貨「ペトロカレンシー」を導入する方針を表明。それによりベネズエラは「通貨主権を推進し、金融封鎖の影響を克服するための取引の実行」が可能になると述べた。

うん、それは理想的に機能すれば、石油と天然ガスと金とダイヤモンドを買うETFと似た値段の動きを提供するだろう。つまり商品ファンド通貨だ。商品ファンドを持っていても悪くないのと同じように、この通貨を持っていても悪くないかもしれないが、そのあたりは好みに依存するわけで、単に低リスクを目指した中央銀行の通貨と比べると、残念ながら汎用性には劣ってしまう。もっと言えば、商品エクスポージャが欲しければ預金の代わりに商品ファンドを持てば一般的には十分であって、日常的な決済にまで溢れ出してくる必要は特に見つからない。もちろん大統領の仕事は、ここでは派手にぶち上げることだ。知ってるさ。


純金1トンが裏付け HIS沢田氏が放つ新仮想通貨|出世ナビ|NIKKEI STYLE
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO24040920Z21C17A1000000

金を担保に使うんです。テンボスコインには金の裏付けを確保します。そのために1トンの純金(約50億円)を購入しました。その価値の範囲でしか、テンボスコインを発行しないから、価値は下落しないはずです。いわば、世界初めての「金本位制の仮想通貨」です。日本の紙幣(日銀券)は輪転機でじゃんじゃん印刷し市中に流している。インフレで価値が目減りするかもしれませんが、テンボスコインなら価値は落ちません。面白いでしょう? 裏付けがあるから消費者にも安心感があるし。

こちらは理想的に機能すればゴールドETFである。しかしながら、とりあえず1トン買いましたから的な、それ以上は出しませんよ的な記述を見ると、何やってるかわかってますか的な不安を覚えざるを得ない。その通貨を持ってくれる人が25億円分しか見つからないとき、残る25億円分のゴールドは誰に帰属するのだろうか。その通貨を持ってくれる人が75億円分も出てきたとき、不足する25億円分のゴールドは買わないのだろうか。そのとき通貨は水割りにするのだろうか。それとも発行が打ち止めになるのだろうか。テンボスコインが売り切れたことを、訪れた客は悲しく思わないだろうか。


その「裏付け」の区分所有権を安心して抱えられるために必要な要件を、もう一度よく考えてみよう。例に挙げているように、見本は既に―ETFのことだが―存在している。中央銀行?アレ見ても駄目だよ、仕組みもスピリットも旧い。さてETFをどんなふうに分散台帳に乗せて、するとそれは、どんなふうに楽しいだろうか。あるいはまた、つまらないだろうか。続きは忘年会でやろうぜ。酒?水割りで。