量的質的財政ファーッ

さて今回*1のメカニズムを、なるべく簡潔に書いてみたいと思う。日銀はこれまで、決済の便利のために紙幣を発行して、短い国債を買っていた。市中の銀行は、我々から預金を集め、その一部を貸し出し、余った分は短い国債を買っていた。もちろん正確には、あれやこれやあるわけだが、今日の目的は、今週の動きを鳥瞰することにある。細かな部分が気になったら、上手に読み替えていただきたい。例えば長短の別は、ここでは相対的な話であって、あまり定義を気にしないでほしい。

                         銀 行
                   --------+--------
      日 銀        短い国債|
--------+--------          | 預  金 
短い国債| 紙  幣    貸  出 |


銀行が持っている短い国債を、日銀が買い取るアクションが「量的」何ちゃらだ。銀行は代わりに「日銀への預金」を持ち、日銀は「銀行から預金」を受ける。要するに、短い国債の所有者が変わって、その分だけ日銀のバランスシートが伸びるわけだ。もちろん特に何も素敵なことは起きない。

      日 銀              銀 行
--------+--------  --------+--------
短い国債| 預  金    預  金 |
        |                  | 預  金 
短い国債| 紙  幣    貸  出 |


皆を驚かせたのが、日銀が長い国債を買うという「質的」何ちゃらだ。今回発表された長さの変化たるや結構なもので、どこからそんなに買うんだよレベルだった。長さとは要するにリスクのことだが、今日よりも明日の方が見通しにくいのは神の決めた事実である。だとすれば遠い先までカネを貸す約束は、借りる側の政府から見ればありがたい話で、従来から政府に長く貸していた例えば生命保険にとってはライバル登場だ。おかげで対価として授受される金利は、競争によって削られてしまう。

      日 銀              銀 行
--------+--------  --------+--------
長い国債| 預  金    預  金 |
        |                  | 預  金 
短い国債| 紙  幣    貸  出 |


歴史的経緯はあったにせよ、これまでさんざん国債買いなよと、制度やら理屈やら雰囲気やら整えて、村の行政やってきて、突然てめえの子分にジャーンと長いの吸わせて在庫不足。そんなの値段は上がる(金利は下がる)に決まってるじゃない。それで「市場ではリスクは予見されていない」とか阿呆かっての。その全体がリスクなんだよ。



というわけで政治家の先生方に、僕から助言しておこう。いまね借りれますよ。バンバン長い国債出せます。だって在庫不足だもの。このプログラムが物価を動かすかって?そんなわけないでしょ。金融祭りだよ。先生方がバンバン出せば、こんどは財政祭り。俺達がほしいものを、俺達がつくり出すチャレンジに、どちらかといえば邪魔です。