クローニー資本主義の根幹を成す金融システム

技術的というかオタク向けの話なので、なるべく端的に書こうと思うのだが、どうにも歴史的経緯からか、早稲田大学教授だけでなく慶應義塾大学教授も、あるいは我々も、つい中央銀行を特別視しがちである。


出口なき量的緩和:Permanent QE : アゴラ - ライブドアブログ
http://agora-web.jp/archives/1627831.html

ベースマネーは無償還(irredeemable)である。すなわち、それ以上は換金できない。準備預金は日銀券のかたちでしか引き出すことができず、現在の日銀券は不換紙幣である。したがって、個々の主体は、何らかの財・サービスや資産を購入することで手持ちのベースマネーの量を減らすことができるとしても、その分だけ売り手の保有するベースマネーの量が増えることになって、社会全体としてみた場合にはベースマネーの量が減ることはない。


制御可能性の話だが、単に事実と異なる。中央銀行のバランスシートを具体的にイメージしながら考えてみよう。簡単な形でよい。


国債
(政府への貸し)
預金
(銀行から借り)
紙幣


現在もトチ狂っている日銀だが、更にトチ狂って預金に例えば-10%の、異次元の「マイナス金利」を課したとしよう。預けている銀行としては、もちろん収益を圧迫するし、預金が一割も減るんじゃ、さすがに株主に説明が難しい。というわけで、多少無理してでも国債に振り向けたくなる。もちろん日銀に預けている銀行の立場は皆同じで、国債を手放したい奴は誰もいない。ならば銀行は揃って、政府から国債を買う。無理にでも買う。すると日銀のバランスシートは、このように変化する。


国債
(政府への貸し)
預金
政府から借り)
紙幣


馬鹿馬鹿しい状態になっていることが、ひと目見ただけでも判別できると思う。が、よく考えると更に馬鹿馬鹿しいのは、政府から見れば、日銀からの借りに金利を払い、更に預金からマイナスの金利を受け取る。つまり金利を払う。おかしな二重ルートで日銀にカネをぶち込めば、会計検査院だって黙っちゃいないだろうし、僕だって騒ぐ。あるいは金融政策は特別だと嘯いてみたところで、時間が経過すれば日銀保有国債が償還を迎える都度、政府預金を減らす形で「受け取る」ことにならざるを得ない。


国債
(政府への貸し)
紙幣


バランスシートは縮んでしまった。ベースマネーはredeemableである。中央銀行とて、預金を守るためには魅力を提示する必要があるわけだ。さて聡明な皆さんは、ひとつ疑問に思われるかもしれない。もう何年もずっと、日銀は預金への利息を0.1%と宣言して、特に水準を操作しないにもかかわらず、順調に預金を集められている。一体何故だろうか。


きちゃったよ。いけないところに。あまり踏み込むと消されるから気をつけなよ。要するに、皆で空気を読み合っているのだ。これがクローニー資本主義の根幹を成す金融システムである。ホントだぜ。マジ。