棚から一掴み

はてなダイアリーのポイントが溜まっていたことに、「使わないと消しちゃいますよ」という通知で気づいて、有料版にしてみました。とはいえ大して変わらなくて、おそらく広告の表示が違って見えるかと思うのですが、書き手からすると、どうもアフィリエイト広告が貼れるらしいと。よーし、いくつか記念に紹介しちゃうぞ。僕が何やら御託を並べるよりも、パッとめくって抜粋してみた方が、これらの魅力が伝わる気がするぞ。ちなみに、あまり本は読まないので、こうした企画は続かないと思います。


文庫 思考する機械コンピュータ (草思社文庫)

文庫 思考する機械コンピュータ (草思社文庫)

山登り法のようなヒューリスティックを使うと、巡回セールスマン問題の解を短い時間内に有効に探すことができる。訪問地点が数千という問題も、たいていの場合、山登り法で実用的に解くことが可能である。つまり、発見的方法を使えば、大部分の場合において、ほとんどいつも最適巡回経路を見つけだすことができるのである。それでは、なぜ巡回セールスマン問題は解くのが困難とされているのだろうか?それは、大部分の場合に正解をもたらす方法で最適解が見つかっても、アルゴリズムで解けたことにはならないからである。巡回セールスマン問題が「解決された」というニュースが時折駆け巡って大騒ぎになったりする――しかし、それは、単に新しい発見的方法が提案されたという話であって、それ以上のことではない。巡回セールスマン問題の解を求める発見的方法を考案することはそれほどむずかしくない。むずかしいのは、いつでも最適解を求められる高速なアルゴリズムを発見することである。


応用数学夜話 (ちくま学芸文庫)

応用数学夜話 (ちくま学芸文庫)

ところが、rを大きくするほど良いからといって、これを無限に大きくしてしまって「無限慎重型方式R」を採用するとどんなことになるであろうか。これは、


方式R: 無限に失敗が続いたら変えるが、それ以外は変えない。


ということになり、実質上「信念型」か「がんこ型」と同じになってしまう。つまり、いったんAを使い始めるといつまでもAを使い、反対にいったんBを使い始めると、いつまでもBを使い続ける型になってしまう。
だから「きわめて慎重なのはいいが、無限に慎重なのは良くない」ということになる。
過去の実績の統計をとって、成功率の高い方を選ぶという方式も、一見良さそうであるが、


方式S: 毎回過去の実績をしらべ、成功率の高かった方を選ぶ。


という形の、完全な統計一点張りの方式になると、やはり平均利得がmax(p1,p2)にはなってくれない。それは、たとえば初めの数回の間にたまたまAの方の成功率が低く出てしまったようなとき、それからあとは「過去の実績の統計にもとづいて」Bの方ばかりが使われ、Aの方は記録を改善する機会を全く与えられないでしまうというおそれがあるからである。こういう事情は世間にはずいぶんよく見受けられるのではないだろうか?


資本論 (1) (国民文庫 (25))

資本論 (1) (国民文庫 (25))

一商品の価値がその生産中に支出される労働の量によって規定されているとすれば、ある人が怠惰または不熟練であればあるほど、彼はその商品を完成するのにそれだけ多くの時間を必要とするので、彼の商品はそれだけ価値が大きい、というように思われるかもしれない。しかし、諸価値の実体をなしている労働は、同じ人間労働であり、同じ人間労働力の支出である。商品世界の諸価値となって現われる社会の総労働力は、無数の個別的労働力から成っているのではあるが、ここでは一つの同じ人間労働力とみなされるのである。これらの個別的労働力のおのおのは、それが社会的平均労働力という性格をもち、このような社会的平均労働力として作用し、したがって一商品の生産においてもただ平均的に必要な、また社会的に必要な労働時間だけを必要とするかぎり、他の労働力と同じ人間労働力なのである。社会的に必要な労働時間とは、現存の社会的に正常な生産条件と、労働の熟練および強度の社会的平均度とをもって、なんらかの使用価値を生産するために必要な労働時間である。たとえば、イギリスで蒸気織機が採用されてからは、一定量の糸を織物に転化させるためにはおそらく以前の半分の労働で足りたであろう。イギリスの手織工はこの転化に実際は相変わらず同じ労働時間を必要としたのであるが、彼の個別的労働時間の生産物は、いまでは半分の社会的労働時間を表わすにすぎなくなり、したがって、それの以前の価値の半分に低落したのである。