横綱の猫騙し - トヨタAA型種類株式

申し込みが殺到して大変なら、もっと高い値段を付けて売らないのは、むしろ背任なんじゃないかと思うのだが、ともあれヘンテコ株は大人気である。その商品性はといえば、資料を読むのも面倒なので勘で恐縮だが、要するに携帯の電話代みたいに面倒なオプションだ。多分。気になる方は、下記を確認されてみて下さい。


トヨタ種類株、発行価格は1株1万0598円 総額4991億円 | Reuters
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PC0O520150702

トヨタ新株に5倍の需要、野村最大の引受案件−手数料225億円 - Bloomberg
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQQOSC6TTDS201.html

第1回AA型種類株式の発行、第1回AA型種類株式に係る発行登録書の取下げおよび提出ならびに第1回AA型種類株式発行に応じた自己株式取得に関するお知らせ
http://www.toyota.co.jp/jpn/investors/stock/share_2015/pdf/commonstock_20150616_01.pdf

AA型種類株式に関するご説明資料
http://www.toyota.co.jp/jpn/investors/stock/share_2015/pdf/commonstock_20150616_02.pdf

AA型種類株式に関するQ&A(平成27年6月16日更新版)
http://www.toyota.co.jp/jpn/investors/stock/share_2015/pdf/commonstock_20150616_03.pdf


で、このオプション性にかかるプレミアム水準は、どの程度が妥当なのだろうか。もちろん野村はアレコレ試算しているだろうが、こちらは手抜きで恐縮だが、最低価格として株価の120%を考えていたそうだ。これが旅行ツアーの最少催行人員である。他方で決まった発行価格は約130%、どうしても差分に発行総額を掛け算したくなってしまう。そう、ざっと数百億が転がり込んできた勘定だ。かーっ。もちろん野村は売り上げて嬉しい。いい調達してトヨタも嬉しい。既存株主だって儲かって嬉しい。ヘンテコ株を買うひとも、なんとなく嬉しい。八方幸せで、この上ないスキームに思える。


なわけねえだろ。何してんだって話だよ。要するにトヨタのブランドと一緒に、イノセントな方々に、割高なオプションを売ったわけだ。「資本市場の幅」とかアホかっての。さらに気が重くなるのは、これだけ大成功を収めたディールの、二匹目のどじょうを狙わない営業なんてボンクラである。彼らは既にハチマキ巻いて全国を飛び回って、次のヘンテコ株の種を撒きまくっている。それいけ波状攻撃。憂鬱になってくる。妥当な価格を探ることさえ面倒な仕組み株が、そこかしこに転がってるような資本市場が、一体誰の目に魅力的に映るのだろうか。横綱猫騙し。成功を収めて、当然皆真似する。どいつもこいつも猫騙し大会。結果として後に続く、興行の魅力の低下。


なあトヨタよ、日本の横綱よ。あんたの仕事はそこじゃない、いいクルマつくることだろ。覚えておこうぜ。商売の魂はいつだって、BSの左側にあるんだ。