財政破綻が起きていない秘密

平成23年度「国の財務書類」が昨日発表された。すこし戸惑ってしまったのは、僕の記憶が正しければ、平成22年度の同じ資料が揃ったのは昨年6月だったはずで、半年ほども早期化されたことになる。そしてhtmlのテーブルにまとめられた「貸借対照表の概要」*1も、実に見やすく整理されていて、地味だが大切な仕事を進める財務省の中の方々には、心から敬意を表したい。


平成23年度「国の財務書類」等の作成 : 財務省
http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2011/20130129.htm


発表資料のタイミングを前倒すという決定は、現場の若手にとって、いつでもマジギレアイテムだ。「それ早く出して、何か意味あるんスか。」人的資源が余っている職場など存在せず、仕事の質を高めるために取り組むべき課題が山積みの中で、ただ「急げ」という指示は、その重要性を理解していても悲しいものだ。にもかかわらず、国債発行計画*2やら他の大切な仕事とともに、こうして鮮やかに結果が提示されれば、ささやかながら僕だってレポートしなけりゃ。


こちらの道具は、すこしだけフワッとした、例のモダンなバランスシートである。未来のフローについても同じ土俵から見据えるべく、財源と費用の定数倍を、それぞれ資産と負債に積んである。もちろん、将来に渡るフローの現在価値をイメージいただきたい。やや乱暴なまとめだが、役所連中の繊細な仕事の土台に乗って、僕らはバードビューしよう。ざっくり前年度*3と見比べれば、補助金を含む[行政サービス]が増え、為替に介入した分だけ米国債と短期債の残高が拡大し、国債がどーんと積み増された。「次世代への負債」は拡大している。


平成23年度末 (兆円)
資産負債
[税収等]56xN[行政サービス]94xN
[社会保険料]39xN[社会保障]45xN
米国債98短期債107
財投143財投債111
固定資産181国債680
年金資産111年金負債119
独法他97借入25
次世代への負債459 + 43xNその他47


普通に捉えれば、左側に純負債が残っている時点で、既に破綻状態である。更に具体的にイメージするために、この"N"に10やら15やらを放り込んでみれば、目も当てられない状況だ。ところが国債の調達金利は、その長い方にまで渡って、空前の低水準が続く。投資家は、格安でじゃんじゃん貸すよと言う。この道具から見たとき、矛盾は一体どこにあるのか。「埋蔵金」としての役所連中の鮮やかな仕事っぷりや、公共用財産の「含み益」で賄える秘密とは、到底思えない。


答えは簡単だ。国債の投資家は将来に向かって、[税収等]または[社会保険料]が増加し、[行政サービス]または[社会保障]が減少することを期待している。財源側の"N"は大きく、費用側の"N"は小さいと考えているわけだ。それも莫大な規模の話である。そんな馬鹿なと、勘弁してくれと、今ここを読んでいる投資家の皆さんすら思うかもしれない。僕だってそう思う。将来には広義の税金が莫大に増え、国民として享受するサービスが激減するというのだ。


だが残念ながら嘘じゃない。だから前総理は奇跡のような仕事で増税法案を通し、現政権はプランを実行に移そうとしている。加えて、遠くない将来に、社会保障支出と補助金の削減も必要になるだろう。「悪魔的な」手段が持ち出されないとすれば、だ。