モジリアニとミラーの世界じゃ、資産だけがモノを言う

http://www.newyorker.com/online/blogs/johncassidy/ で「シカゴの連中に金融危機を聞く」みたいな企画があって、ポズナーやらコクランやらベッカーやら、大物にインタビューしまくっていて面白いのだが、いつも突き抜けているファーマへのそれから、部分的に抜粋してみたい。例によって何もかも気持ちよくぶった斬るので、英語も簡潔で読みやすいです。下記で興味を持たれた方は、是非原記事*1へ。

金融危機と効率的市場仮説について)
効率的市場仮説は、この金融危機の中でも、とてもよく機能してたと思うぜ。株価は典型的には、不況の前と、その最中に下がる。今回は特に厳しい不況だが、人々がそのことを認識する前に、価格は前もって下がり始めたし、その後も下落は続いた。その点において、普段と違うところは何ひとつなかった。これこそが、市場は効率的だと考えることなんだ。

(ファンダメンタルズから価格が乖離する「バブル」について)
そのとき誰かが、そっちに沢山のカネを賭けてるってことだろ。値段が下がった後で、それがバブルだったって言うのは簡単さ。千里眼はバックミラーの中しか見えない。いつも皆、後になってから見つけるんだ、価格が高すぎると誰それが前もって予告してたってね。そりゃいつも誰かしらは、高すぎるって言ってるさ。後で見たとき当たってりゃ神扱いだし、間違ってりゃ知らんぷり。そんなもん、大体常に半々だよ。

(不況の原因について)
(笑)経済学がいつも破綻するところさ。何が不況の原因か、よくわからないんだよ。ま、俺はマクロの人間じゃないから、そのことで胃が痛くなったりはしないけどな。(笑)これまで、ずっとわからないまま。何が恐慌の原因か、今日も議論は続いてるよ。経済学は、経済のスウィングについて、あんまり上手に説明できないんだ。

(信用危機について)
誰もが信用危機について話すけど、株式リターンのリスク、VIX指数は年率60%にまで上昇した。このことは信用市場だけの危機じゃないって示唆してる。こんな状況でカネを差し出すなんてのは、誰にとっても馬鹿げてるさ。だって借り手が逝っちまう可能性は高いんだから。効率的な市場なら、負債は干上がるだろうさ。借り替えようとしても、超短期にならざるを得ない。ボラティリティが落ち着くまではな。

ボラティリティを上昇させたのは?)
(笑)だからわからねえんだよ、経済活動ってのはさ。で、そのことは、実際どれだけ状況が悪いのかについても、たくさんの不確実性があることを示してる。だとすればボラティリティだって上昇するし、資金は借りられなくなるわな。

(「大きすぎて潰せない」問題について)
簡単なのは、他人のカネをおもちゃにしないように、ちょっとじゃなく沢山の資本を積んでるか、よく確認することさ。レバレッジは重要だと考えてる連中も、シカゴにはいる。ただ本当にその通りかは、よくわからないと思ってるんだ。Doug Diamondか、Raghu Rajanに聞いてみな、奴ら金融機関が、レバレッジがどんなふうに活用できるかを考えてる。俺は奴らが言うほど、それが重要だとは思わないけどな。

(資本増強規制で金融業界の再編が進む?)
そうは思わないな。どう説明したもんか、結局のところさ、俺は(マートン)ミラーの教え子なんだ。モジリアニとミラーの世界じゃ、資産だけがモノを言う。バランスシートの右側はマターじゃない。借金じゃなくて主に株式で調達するべきだといっても、特にその活動を邪魔しないと思うぜ。それぞれリスクが変わるだけさ。

クルーグマンが主張する政府の役割について)
皇帝になりたがってるのさ、奴は。すべてのエコノミストが嫌いなんだろう。(笑)

ウォール街への規制について)
避けられないよな、デカすぎる銀行がトラブルに陥ったとき、政府が救済するってんなら。ただ、うまく機能するとは思えない。民間企業は、規制をうまく避けながら投資するのが上手だ。規制に沿ったようでいて、裏でアカンベするようなやり方を、彼らはすぐに見つけるさ。最高の人材を、規制する側に惹きつけるのは難しい。

金融危機は経済学を変えるか?)
全然。どう変えるってんだ?もしそれが俺にわかるんなら、とっくにやってるよ。わかんねえよ。(笑)何がビジネスサイクルを生み出すのか、すごく知りたいけどな。

(人々は相対価格には敏感だが、水準そのものには鈍感なのでは?)
そう言うよな。でも、その根拠がどこにあるのか、俺にはわからない。もしわかれば、リッチになれるはずだ。水準が高いとか安いとか、正確にわかるのなら、儲けられるはずだからな。

(低リターンの後には高リターンが続くことについて)
そんな証拠は、見つかってないんだ。株式の期待リターンってのは、人々が市場のリスクを負担するとき、要求する価格のことだ。で、あらゆる価格がそうであるように、刻一刻と変わるんだけど、もしかしたら予測できるのかもしれない。市場リターンが、ほんのちょっとだけ予測可能かもしれないという仕事を、ずっとしてきたんだけど、必ずしも多くの同意があるわけじゃないんだ、統計的な問題を含んでる。
問題はさ、ほとんど確実に、期待リターンは時間とともに変わるってことだ。なぜなら、どれだけリスクを避けたいか、それから富も、他のすべてが、時間とともに変わる。それらを測るためには、(リスク回避度を)よく表現する変数だとか、よく追いかけるモデルだとかが必要だ。でも、そんなもの持ってない。俺も含めて、皆がとる方法ってのは、その都度、都合のよい変数をとってくる。その結果ピックアップされてきたものが、本当に求めるものなのか、それとも単に統計の幸運に過ぎないのか、議論はいつもそこさ。まさに http://www.sfs.org/ で、両側から喧々諤々の大騒ぎ。そうなると、信頼できる結果なんてものは、そもそも存在しない。

クルーグマンのシカゴ攻撃について)
(笑)こう思うぜ。もしクルーグマンが君に攻撃を仕掛けてきたなら、何か正しいことをやってるって証拠さ。


またしても*2調子に乗って、べらんめえ調になってしまった。不快にさせた方、ごめんなさい。この痛快さが、どうしてもそう仕向けるのです。