フィンテック風サービス雑感

ここのところフィンテック風というか、取引サービスのようなものがポツポツ出てきて、どれも使ったことはないのですが、勘で徒然に書いてみようかなと。間違っていたら、教えて下さい。


VALU | だれでも、株式会社のように、あなたの価値をトレード。
https://valu.is/

株式会社のように、などと言われた瞬間にゲーと思ってしまう*1のは、どうしたってロクでもない場面ばかり思い浮かぶからですが、実際のところ何を売買するサービスなのかよくわからず、スパイスとしてのビットコインをまぶしつつ、むしろ「俺たちは雰囲気で」を地で行ってる感じにシビれます。無をトレードしますみたいなパロディ*2の方が、むしろ構造を浮き彫りにする素敵さを備えている気もしますが、試行錯誤の過程なのか、最近は「優待」と称して、何らかのサービスを提示する発行者も出てきているようです。とはいえ、やりとりを最初から仕組みベースで提供されていないと、どうしても金融的には、悪貨に駆逐されてしまう未来もチラつきます。蛇足ながら、構造的に詐欺的なアクションが比較的容易なサービスにもかかわらず、リリースやらニュースの中で金融庁にまで言及されることには正直ビビるのは、歴史を振り返るまでもなく役所の名前を騙る連中は常に詐欺の一大勢力で、消費者庁を含む当局だって、常にそのことは気にしています。


CASH|目の前のアイテムが 一瞬でキャッシュに変わる
https://cash.jp/

現在は稼働していないようですが、写真を撮るだけ簡単査定のオンライン質屋のようなサービスに見えます。ところが、よく見ると薄い字で、カネを返す場合には15%/2月を取りますみたいな(手数料と称した)豪快な金利*3が書いてあってシビれます。これだけの数字なら、一見担保に見えるモノと写真については、やってる感のためのダミーあるいは連絡パイプ確保のための手段と言ってもおかしくはなさそうで、実際のところ何の写真を送っても、カテゴリに応じて決まった金額を返してくるらしいことを確認する遊びまで流行っていたようです。グレーゾーンというか、屁理屈的に法体系の脆弱性を突くことは、もちろん未来に向けて整備を喚起するアクションとしては強力なのでしょうが、もうちょっと日陰っぽくやらないと、最近は消費者庁の活躍も目覚ましいわけで、なんというか正直ビビります。


日本円に対して為替が安定した仮想通貨を志向した デジタルトークン社会実験において「Zen」の発行を開始 | BCCC - ブロックチェーン推進協会
http://bccc.global/ja/articles/20170705.html

箱の区分所有権を売却すると同時に、資産として円の短期金融資産を買い持つ仕組みのようですが、だとすれば要するにMRFの再発明にはなりませんか。金融規制の歴史が示すように、こういった仕組みから脆弱性を取り除いて洗練させるのは大変で、いっそのことMRFクローンからスタートした方がスピードがあるようにも思われました。現在はゼロに近い金利も、日本を除く先進諸国では既に見直しが始まっているところですが、そうなれば資産側も当然のことながら、金利分だけ増えていくわけです。当初100Zen=100円だったものが、いつからか100Zen=101円のように、だんだんと見にくい単位になってしまうところは残念*4ですが、保有するZenの方を増やす連続的な分割もまた面倒です。思い切ってポイントカード的に、最初から購入額相当を保証した方が、決済通貨としての使い勝手はずっとスッキリしそうですが、そうなればクオカードやスイカと見分けがつかなくなってしまい先端感も減るジレンマでしょうか。


Timebank(タイムバンク)
http://timebank.jp/

例えばコンビニのアルバイトも時給なわけですが、さほど珍しくない「時間を売る」アクションの柔軟性を高める内容のように見えます。買う側から見たときに、では有名人の10秒を保有することの嬉しさは、例えばバフェットとのランチ*5を想起すればよいのかもしれませんが、何を話したらよいのか正直戸惑うところです。どちらかといえば、この仕組みが例えばフリーランスのマッチングを広げるのなら、そちらの方が素敵なことなのかもしれません。とはいえ時給の制約のようなものが、ここでも結局のところ効いてくるように思えるのは、そもそも時間の価値は使い方次第であって、その内容をあらかじめ約束しようと思えば、VALUの「優待」やら他の既存サービスにも近づくのかもしれません。あるいは、より内容ネイティブな形の仕組みなりサービスの姿が、何らか存在する*6はずです。マーケィング的には力強い「時間銀行」という言葉の幻影は利用しつつも、人間の営みにかかる取引の姿を探り、それらを直接的に扱えるように、我々も頭を体操したいものです。


こうして見ると、より値段に着目した*7取引サービスの出現に最近の特徴を感じられますが、これらに先駆けて登場した、二択の賭けを取引する我が http://chopsticks.trade/ の直球加減に、手前味噌ながら一層のコクを感じるところでもあります。諸事情ありまして、ここのところ元気に営業できていませんが、今年の後半から来年にかけて頑張っていきたい所存です。また、その発展に力を貸していただけるという方、一杯ビール*8おごりますよ。

*1:その後、削除されたそうです

*2:https://nilu-is.appspot.com/user/t9pHHvxFwvOQnzuJGNsFDmFfExl1

*3:その後、買い取り専門になったそうです

*4:金利分はサービス側が取るのではないか、とのコメントをいただきました

*5:https://twitter.com/equilibrista/status/907534254929715200

*6:東インド会社かもしれません

*7:あるいは巧妙に回避した

*8:http://beerbalance.net/