金融に未来はあるか - Other People's Money

まず日本語版への序文から引用しよう。

スチュワードシップ、つまり企業が適切なコーポレート・ガバナンス(企業統治)、有効な後継者育成計画、そして事業を展開している市場や経済圏にぴったりの戦略を整えられるよう見守ることは、もはや、投資に伴う付随的な役割ではなくなった。投資を行うということは、一義的にスチュワードシップなのだ。英国は過去20年にわたり、諸外国に先駆けてスチュワードシップを開拓し、体系化を進めてきた。これには切迫した、独自の事情もあった。英国は主要国の中で、株式保有のパターンが最も多様なのだ。続いて日本を含め、諸外国も英国に倣った。私の仕事である「ケイ・レビュー」が、日本におけるスチュワードシップ・コードの導入に影響を与えた要因の一つであると知って、光栄に思っている。どの国であれ重要なのは、単にチェックシート方式で形式的なガバナンス手順を確認することが、スチュワードシップであると考えてはいけないということだ。そうではなくて、投資決定と企業戦略の策定に、スチュワードシップを完全に組み込んでしまうことが大切なのだ。日本のスチュワードシップがどのように進展したか、教えていただく日を心待ちにしている。われわれは皆、国際的な経験から大いに学ぶものだから。


序章 なぜ、金融機関は儲かっているように見えるのか
第I部 金融化――異世界のはじまり
 第1章 金融化に至る短い歴史
 第2章 リスクと「金融のイノベーション」なるもの
 第3章 頼りない金融仲介機能
 第4章 投資銀行のおぼつかない利益
第II部 遷ろいゆく金融の機能
 第5章 世界の余剰資金は、どのように配分されているか
 第6章 預金は、どうすれば守れるのか
 第7章 資産運用会社が中心となるべきだ
第III部 金融システムをどう直すか
 第8章 改革にどうしても必要なもの
終章 金融の未来はどこに


そして、訳者あとがきから引用だ。

世界金融危機の総括本もほぼ出尽くした中にあって、ジョン・ケイ教授*1が放った本書(原題 Other People's Money)は、際立った独自性とスケールで欧米メディアや識者の絶賛を浴びた。何より新鮮だったのは、金融業界に精通した大家が、業界内の思考回路から離れ、まっさらな目で本質に切り込んだことだ。ケイ教授はホームページなどで「イデオロギーに依らず、物事を多元的に見る」「経済学を実社会に応用する」という信条を披露しており、象牙の塔にこもらない教授の視野と洞察力が、本書にはいかんなく発揮されている。


なぜ引用ばかりかと言えば、もちろん、まだ僕も全部読めていないからです。