財務の独立性

会計検査院から、平成27年度決算検査報告の概要が公表され、その中で、最近の金融政策と日本銀行の財務について指摘されている。


量的・質的金融緩和等の日本銀行の財務への影響について(PDF形式:108KB)
http://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary27/pdf/fy27_tokutei_04.pdf

したがって、日本銀行においては、金融調節等を通じて取得した金融資産について、保有長期国債の利回りが低下してきているなどの状況も踏まえて適切に各引当金を積み立て、また、特に必要があると認めるときは、当期剰余金の5%に相当する額を超える金額を法定準備金に積み立てるなど財務の健全性の確保に努めることが重要である。また、財務省においては、日本銀行から引当金の積立てを含む財務諸表等の承認又は法定準備金の積立ての認可の申請があった場合には、今後の日本銀行の財務の健全性を勘案した上で、国民に還元されるべきとされている日本銀行の利益の特質等に留意しつつ、引き続き適切に承認又は認可を行っていくことが必要である。


長期債の価格は、主に日銀自身のアクションによって上昇し、実際には含み益を抱えている状況になるわけだが、ともあれ財務に気をつけろという所見である。面白いのは引用部分の2文目で、財務省は、日銀が自身の財務を守ろうとすることを妨げるなと言っている。つい先日から浮かびつつあった今日のタイトルが、耳の底から響いてきた。これまで見たことがないので、おそらく誰も指摘していないと思うのだが、最初の壁を破ろう。中央銀行の独立性とは、財務の独立性のことである。


日本銀行の独立性とは何ですか?:日本銀行 Bank of Japan
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/outline/a03.htm/

日本銀行法第3条第1項では、「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない」として、金融政策の独立性について定められています。また、同第5条第2項では、「日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない」として、業務運営の自主性について定められています。


通貨及び金融の調節における自主性とは、日本語に翻訳すれば、財務省あるいは政権の意向で、日銀の意思に反した形で国債を買わされないことだ。日銀の意思はといえば、当然、目的であるところの物価の安定に沿うわけだ。自らの財務の毀損による、高インフレ*1を防ぐことである。紙幣であれ、我々の貸し借りであれ、狭義の信用とは常に、貸したカネが返されるか否かという話であって、現代の契約社会では、必然的に財務のことを指す。