購買力スプレッド

春以降にも、例えば食品の値上げは、まだまだ沢山やってくるようだが、端的に言って円安は、我々のカネが外国製品を買う力を弱めている。要するに、日銀が余計なことをしなければ我々はパンをもっと安く買えたはずだが、この価格差を「購買力スプレッド」と呼ぼう。我々の買い物と購買力スプレッドの積を、外国に資産を持つ者が上げた利益と比較することは、ちっともおかしくない。要するに生活が苦しくなった分だけ、儲かった奴がいるという話である。個人だけでなく、法人や政府も含めて。


スイス中銀、フラン高抑制・経済防衛の主要手段を放棄
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NI7R2H6KLVR801.html


スイス中銀が、事実上のユーロへのペッグを断念したわけだが、端的に言ってこれまでの政策は、スイスフランが外国製品を買う力を弱めていた。要するに、SNBが余計なことをしなければスイスの人々は自動車をもっと安く買えたはずだが、この価格差が「購買力スプレッド」である。スイスの人々の買い物と購買力スプレッドの積を、ユーロを持つ者が受けた恩恵と比較することは、ちっともおかしくない。要するに生活が圧迫された分だけ、ユーロを持つ連中に寄付していた。個人だけでなく、法人や政府も含めて。


ECBの緩和プログラムをめぐって、ドイツの人々が目くじらを立てているが、端的に言って共通通貨は、ドイツの人々が外国製品を買う力を弱めている。要するに、独自の通貨を使っていたらドイツの人々は電力をもっと安く買えたはずだが、この価格差が「購買力スプレッド」である。ドイツの人々の買い物と購買力スプレッドの積を、ギリシャ南欧が受けた恩恵と比較することは、ちっともおかしくない。要するに働かない連中にくれてやるカネなど、一マルクだってないってわけだ。個人だけでなく、法人や政府も含めて。


誰が誰にカネを渡すのか、どうやって決められるかと考えれば、どうしたってタフなプロセスしか想像できないはずだ。然るに中央銀行やら政府の一室で、何かを決められるような気がして、とりあえず決めてみたところで、あちこちで問題が噴出する。必然だ。金融政策の時代は、SNBや日銀の阿呆なプログラムと似て、決して長くは続かないだろうことを予言しておきたい。