25世紀のネバーランド
それよりもずっと後の話、25世紀のネバーランドには、銀行が無数に存在した。貸す金利は、低い方が好まれるので、皆なるべく低くしようとした。預かる金利は、高い方が好まれるので、皆なるべく高くしようとした。
預金を安心して使えるように、A)その銀行が潰れる、B)潰れない、という保険をセットにすることが義務だった。リスクを好む者は、そうした取引の反対側に回った。保険のない預金は、つまりリスクのある投資商品だった。
銀行を介さない、個々の貸借も増えた。「今度払います」という約束を記録したり、あるいは譲渡することは、技術的には容易だった。その内容も、例えばコメでもビールでも、多様なものを扱うことができた。もちろん保険を付けることもできた。
金利は、誰も自由には決められなかった。低く貸すことはできたが、そのとき資金の調達は困難だった。高く預かることはできたが、そのとき資金の運用は困難だった。つまり続かない。銀行の倒産は増えたが、金融危機は減っていた。