本物のマイナス金利

昨日のニセのマイナス金利について、単に預けねえよで終わる話なら、今後の上乗せ部分だけでなく、すべての当座預金についてマイナス金利にしても、いずれにせよ大した違いはないのではないか、との質問をいただいた。そのとおりである。預金は減って、その分だけ国債は銀行に手渡されるだろう。


マイナス金利でもって、銀行が「資金を貸し出しに向けることを促す」とか、わけのわからない解説も見かける*1わけだが、だったら残高全部をマイナス金利にして、銀行に当座預金を積ませることをやめた方がよいわけで、もうトンチンカン極まりない。


あるいは「イールドカーブの起点を沈める」みたいなチートシートを、会見では総裁が読み上げていたが、じゃ例えば日銀が預金の金利を-10%にしたとして、その分だけ左端が下がると思われるだろうか。なわけないだろ。要するに、これまで吊り上げ気味だった0.1%分が、リリースされるという話である。日銀の事務方さん、大丈夫ですか。


というわけで、どこから突っ込んでよいのか逆に迷ってしまうレベルの政策だが、悪口ばかり並べても読後感が悪いと思うので、本物のマイナス金利政策について、ご提案して終わりたいと思う。じゃーん、こんな感じだ。


貸出預金
紙幣


日銀のバランスシートをイメージいただきたい。右側の、預金の金利なんて全然どうでもいい。紙幣も放っておけ。いろいろ国債やら何やら入っている左側、資産側から-10%の金利で、銀行に貸し出しを実行するのである。これ。


ものすごいぜ。なんてったって銀行は日銀から-10%で借りる。借りまくる。その大半を、どこかに-9%で貸したとしても、利益が出ちゃうわけだ。-9%で借りた連中は、その大半を、どこかに-8%で貸したとしても、利益が出ちゃうわけだ。-8%で借りた連中は、その大半を、どこかに-7%で貸したとしても、利益が出ちゃうわけだ。以下略。世界中のバランスシートが伸びまくる、本物の乗数効果である。ざまあみろ。ではなぜ日銀は、あるいは世界中の中央銀行は、このプログラムを実行しないのだろう。

  1. 思いつかない
  2. 出し惜しみしている
  3. 単にビビっている
  4. そりゃマズい


皆さんは、どう思われるだろうか。