マイナス金利の理論的限界

黒田総裁は国会で「理論的にはマイナス0.5%まで金利を引き下げる余地がある」などと答弁したそうだが、マイナス金利を巡っては、けっこうな肩書のセンセイ方も相当にトンチンカンな見解やら解説を投げ合っていて、実に味わい深いわけだが、ここでスカッとした理論を提示しておきたい。あのな理論てのは、どこかでスカッとしてる必要があるんだ。覚えときな。


マイナス金利幅の拡大、理論的余地は相当にある=黒田日銀総裁 | ロイター
http://jp.reuters.com/article/boj-mainus-ir-idJPKCN0WI06Z

理論的限界はゼロである

はっきり言おう。当座預金に付ける金利の下限はゼロである。いまマイナスじゃないかって?そんなもの未来に向かって、消えていく運命にあるのですよ。だってね、皆イヤでしょ。だから昨日も例外を認めてくれ*1と、MRFのことですが、頑張った連中がいるわけです。そしてロイターによれば、まだ信託はブーたれてる*2と。そうして皆がマイナス金利から逃げようとするほど、当然のことながら、そこに商機を見出す*3連中が出てくる。ウチならゼロでも受けますよと、任せて下さいよ*4と。当の日銀さえマネタリーベースの拡張を保つために、既存の連中には補助金を出して*5カネを集める必要があるわけだ。


そうして短い足のカネを預かる戦いの中、未来に向かって、金庫代はゼロに潰れていく。他のすべての商売と同じです。言い換えれば、実現しているマイナス金利の深さは、現在の非効率を表現している。僕ら市場参加者が、綱引きの現場に支払っているコストが、引き潮の中で、目に見える形になって現れたわけです。ただその厚い鞘は、未来に向かって、削られていく。他のすべての商売と同じです。一月の会合の当日に書いた*6ことです。

理論的に限界はない

しかしね、あるんですよ突き抜ける方法。しかもぶっちぎり。実に簡単でね、マイナス金利で借りるんじゃなくて、マイナス金利で貸してやればいい。これなら競争相手は現れませんよ。だって損するもの。これが債券市場で起きてることだ。狂った奴にしかできない。素人にはおすすめできない。しかし借り手は殺到して、マイナス金利の目標なんて、どんなに深くとも簡単に実現してしまう。要するにハラキリ。一月の会合の翌日に書いた*7ことです。


ただハラキリを続けていれば誰でも、いずれ出血多量で死んでしまう。マイナスで貸してくれる奴なんて見つからない中で、自分だけマイナスで貸し続けていれば、財務は苦しくなる。信用は失われる一方だ。だからマイナス金利は、その深さに理論的限界がなかったとしても、須く刹那的である。安く売ることはできても、安く買うことはままならない。他のすべての商売と同じです。