黒田日銀のための出口戦略入門

要するにリスク資産を売り抜けろという話なのだが、FRBもアワアワする*1中、いつものように基本的な大枠について、今後のためにメモしておきたい。

  • 低利誘導の終了
  • リスク資産の売却

いまだ見えてこない景色ではあるが、徐々に各地で資金需要が強まってくる一方で、どうにもロクでもないモノばかりへ投資されているように感じられたとき―21世紀の我々に長崎オランダ村は不要なわけだが―、いわゆる金融緩和を緩和しようと、「引き締め」ようとするとき、どうしたって実行する必要のあるプログラムが、上記の2つである。問題は順序だ。

利上げしてからリスク資産を売却

こりゃ駄目だ。長期債だって株だってREITだって、ジャーと利上げの水をぶっかけたら、日銀が持ってる分も冷えちゃう。それで国庫への納付を減らしたり、含み損を膨らませたりしたら、誰に何を言われるか、わかったもんじゃない。というか僕だって騒ぐ。メディアだって政治家だって、ここぞとばかりにボロカス攻撃に決まってるじゃないか。買え買え言っていたニャンコ先生は、もちろん助けてくれない。言うまでもないことだが、本当に深刻な含み損に陥り、紙幣への不信から高インフレを導くことは、日銀が最も避けねばならない事態でもある。

リスク資産を売却してから利上げ

必然的に、順序としてはこちらになるわけだが、もちろん簡単な話じゃないのは、利害関係者は揃って口を尖らせるだろう。というか僕だって困る。なんでいま売るんだよ。日銀が抱えているようなリスク資産について、売却圧力を喜ぶ者を見つけることは難しい。長期債が売られれば、政府も機関投資家も困る。株が売られれば、皆が困る。REITを通じて不動産が売られれば、やはり皆が困る。こんなとき喜ぶのは、JGB売りをウリにする投機屋くらいのものだ。


とはいえ嬉しいことに一筋の光、ゴマカシの隠れ蓑が残っている。さんざんハッタリこいたマネタリーベースだ。こいつは御存知の通り、増やそうとも減らそうとも、どっちみち資金調達環境には殆ど影響を与えない。ウルサイ政治家の先生方に向けても、騒ぎたがるメディアに向けても、胸を張って、こんなふうに言い張っておこう。


「マネタリーベースは極めて拡張的な状況を保っている」


もちろん預金してくれる金融機関には、利上げに相応する分くらいの利息を、煙幕代として払ってやる必要は出てくるが、風が吹いて丸裸が晒されてしまう前に、しれっと徐々に売り続けるのだ。細く長いトンネルだが、道は一本しかない。タイムリーであることが重要なのは、先送りにするほど、後々の処理は面倒になってしまう。