議決権は誰のものか

メルカリ*1で議決権が売られているそうで、日経の記事にはイベント入場券や土産物引換券のような扱いで書かれているわけですが、もちろん普通に議決権は行使できるわけです。委任状が要るだろみたいな手続き論もあるわけですが、あるいは禁止するにしても「なあ今度ビールおごる*2から、あの議案に反対してくれよ」みたいな買収の実効性について考えるほど、どうにも釈然としない。


メルカリに「議決権行使書」出品多数 特典狙い?
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ13HAU_T10C17A6000000/


そもそも議決権て何だっけと考えると、株主の意向を表現する権利なのでしょうが、それを売っちゃダメなのかと聞かれると、よくわからない。なんとなく素朴には、商売のリスクを負担する株主に主張してほしい気もするわけですが、その権利を売って、意向を表現できない分だけカネを得ることが、すごくおかしいとは言いにくい気もしてくる。


あるいは例えば3月末時点で株主であることが、意向を表現するための資格として、バッチリスッキリ気持ちよいかといえば、そこも釈然としない。株主総会の時点で既に売ってしまっているケースや、あるいは長く持つつもりの乏しいケースだって少なくないはずで、だとすれば見方を変えれば、まず権利を買って意向を表現してから、その後に株主になることを検討する道筋があることは、すごくおかしいとは言いにくい気もしてくる。


ルール整備の方向はともかくとして、オークションで既に実際に売られているわけで、どうしても裁定*3について考えたくなってしまう。現物をロングしつつ、スワップでもオプションのコンボでも、ヘッジしている者が議決権を持ち、実際にリスクを負担するものは議決権を持たない。価格と変化に目を向けるなら、配当落ち(あるいは優待落ち)には、そのとき同時に「議決権落ち」が含まれていると考えるのが自然なのだろう。


これ、少なくともアクティブな議決権行使を放棄するパッシブなマネージャは、議決権行使会社にカネを払うよりも、メルカリで議決権を売ったカネをファンドに返す方が*4忠実とは言えないか。あるいはGPIFをスチュワードに任命した覚えはないので、議決権の分だけカネ返せという加入者にも、三分の理があるとは言えないか。ともあれ釈然としない。