価格統制のカモり方

クリーブランド連銀 [twitter:@ClevelandFed] が、第二次世界大戦中のFRBによる“yield-curve control”の失敗についてペーパーを出した。乱暴に要約するなら、政府が借りまくって、その後が大変だったという話だが、リスク証券の流動性が高まった現代に生きる我々として、ここから学べるレッスンについて考えてみたい。


The Fed’s Yield-Curve-Control Policy
https://www.clevelandfed.org/en/newsroom-and-events/publications/economic-commentary/2016-economic-commentaries/ec-201615-the-feds-yield-curve-control-policy.aspx


イールドカーブをコントロールするなどとカタカナを並べれば、とりあえずトーシロはビビるだろ、みたいなセコい考え方*1も透けて見える日銀の政策だが、要するに国債の価格統制である。対象が国債であれ、為替であれ、農産物であれ、賃金であれ、価格統制に直面した投機屋にとって、取るべき行動はシンプルだ。安ければ買う、高ければ売る、それだけ。汗水垂らして働くなんて、馬鹿馬鹿しいったらありゃしない。

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安               0               高


国債が安く見えるとき、国債を買う。金利が高く見えるとき、カネを貸す。シンプルだ。買うカネ貸すカネが手元にないときには、あるいはもっと欲しいときには、借りてくる。借りてきて国債を買う。借りてきてカネを貸す。最近では第二次大戦中と違って、より便利なツールも台頭しつつある。例えば先物、これカネ要らない。あるいは「カネを借りる」と「国債を買う」のセット商品と考えてもよいかもしれない。

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安               0               高


国債が高く見えるとき、国債を売る。金利が低く見えるとき、カネを借りる。シンプルだ。売る国債が手元にないときには、自分で債券を発行しちゃう。もちろん国債よりは、あなたの信用がない分だけ高い金利になるわけだが、土台となる国債金利が低い分だけ、あなたの債券も金利は低い。つまり安く借りることができる。突っ込む先?とりあえず不動産やら株式やら、商品やら新興国やら、日銀当座やら、お好きなところへ。


こうした理屈に沿う形で、当時の米国政府は国債を発行しまくった。FRBをカモって、カネを借りまくったわけだ。もちろん、借りて突っ込んだ先がロクでもなければ、その先には、ロクでもない未来が待っている。待っていたわけだ。


ただ大事なことは、誰も世界を制御することはできない。できるのは、先回り。第二次大戦当時に比べて、さまざまな意味で、リスク証券の流動性は高い。市場は繋がっている。僕らは、当時の米国政府と似たような、そして更に洗練された行動を取る。

*1:あるいは自分自身を向いているのかもしれない