スティープ化とドル高

トランプ祭りに突入して以降、米国債が売られた(長期金利が上昇した)からドルが買われた、みたいな説明を頻繁に見かけるのだが、そんなふうに見える関係は当然のことながら最近のことに過ぎないわけで、あるいは取引したことのある者なら誰でも知っていることだが、そもそも為替は短期金利の交換であって、長い債券との関係は直接的とは言えない。


じゃ何がそう動かしてるかって、そんなもん説明としてフィットするのは利上げ予想ですよ。新大統領が強く意識しているか否かは別として、選挙戦でオバマの方を向いて仕事をしているとイエレンを批判したアレ*1だ。もちろん放漫財政と大幅減税も、これを助ける方向なわけだが、近い将来に利上げが待っているなら、より高い水準で長い金利を取引しておく理由になるわけだし、近い将来に利上げが待っているなら、そのとき取引されるだろう為替の水準を、いまから先取りしておく理由になる。つまり二者の相関は因果でない、統計学の教科書に出てくる典型的なアレだ。


この関係は安定的かって?そうは問屋が卸さない例を探しましょうよ。近い将来に米国で利上げが待っているという予想で前もって(対円で)ドルを買うとき、おっかないシナリオは何かといえば、1)やっぱり利上げしない、2)円の利上げ、の二点である。どちらも簡単でないことは説明するまでもなさそうだが、これまで利上げを先送りし続けて、さすがに動かなきゃとFRBの舵取りの多くは考えてるわけだし、じゃ日銀はと言えば、舵取りの多くは何も考えずに、ひたすら壁を押し続けている。


ありがとう中央銀行、要するに君たちが投機屋を助けている。物価であれ金利であれ、彼らが掲げる目標水準を断固として実現するコミットメントほど、山師にとって居心地のよい布団はない。果報は温床で寝て待て。ところで、このようにして結果的に実現した、強いドルは米国の利益である的な状況は、どこまで続くだろうか。トランプがFRBに利下げ圧力をかける方向にフリップするのか、あるいは日本を含めて片っ端から為替操作国認定して回るのか、また単にグダグダするのか。そこはまだわからない。