相場操縦、モメンタム、情報開示
こんなのどうでもいいと思うんだが、村上ファンドの村上氏が売って、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反容疑で強制調査だそうだ。
村上元代表を強制調査 アパレル株の株価操作の疑い:日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG25HCJ_V21C15A1EA2000/
関係者によると、村上元代表は2014年6月から7月にかけて、証券会社などからTSIホールディングス株を借りて大量売却し、値下がりした後に買い戻す「空売り」という手法を悪用。同社の株価を不正に下げた疑いがもたれている。
取引から利益を生み出そうと思えば、順序はともかく、1)安く買う、2)高く売る、ことが必要だが、その一方にのみインパクトを出し、他方を静かに実行することは、もちろん簡単じゃない。誰かがオリャオリャと売って、ゴンゴン下げていったとしよう。特に当該企業を取り巻く環境に変化がなければ、割安と見ることも可能である。暇な物好きがちょっと買い出すことを思えば、その後に売った分を買い戻そうとするとき、結果的に更に値上がってしまう状況は、容易に想像できないだろうか。もちろん、このときオリャオリャ野郎は損をしている。安く売って、高く買ったからだ。
では、なぜオリャオリャ野郎は、こんなプログラムを実行するのだろうか。現実は理屈よりも奇なり。直接的なカモがいなかったとしても、上記のようにはならない場合もあるからだ。ゴンゴンと市場インパクトが価格を動かすとき、特に当該企業を取り巻く環境に変化がなかったとしても、「何かあるかもしれない」と、とりあえず追随してみる連中が出てくる。そう、繁華街の行列商法と同じである。あるいは「呼び水」を高らかに宣言したセントラルバンカーもいた気がする*1が、その話はまた今度にしよう。ともあれつまり、何も考えずに後追いしてくれる「フリーライダー」は、この手の相場操縦に対してプレミアムを支払うことになる。
言い換えれば、このような相場操縦を禁止することが誰を救うかといえば、何も考えずに後追いするモメンタマーである。最初にどうでもいいと書いたのは、看板も見ずに後ろに回って行列を伸ばす奴を、税金で救済する理由は特になかろう。こうした監視と取締りがバリバリに機能している市場では、短期のモメンタムを重視するプレイヤーは、安心して市場に参加できる。うむ、本当にどうでもいい。あるいは前方の確認が得意なプレイヤーにとっては、オリャオリャ野郎をカモる機会を、当局が潰していると見ることすら可能である。
ただただ馬鹿馬鹿とウンコを投げるのも、生産的じゃないと怒られそうなので、敢えて何か提案のようなものを考えるとすれば、当該企業を取り巻く環境に変化があるのか否か、より知りやすい、確認しやすい状況を整備することは悪くないと思う。「下がってるけど、何かあったっけかな」と思ったとき、岡三マンを確認するだけでなく、他にも行動アイテムが生まれたら素敵じゃないか。発行側にも投資家側にも、どちらにもメリットのある開示義務付けは存在するはずで、もちろん綱引きの中央付近を探るのは簡単な仕事じゃないだろうが、とはいえ捜査祭りだって安くないわけで、頑張ってみませんか役人さん。