中央銀行を監査せよ - #御行は大丈夫ですか

"End the Fed"のロン・ポールの息子、共和党ランド・ポール上院議員が"Audit the Fed"なるシビれるキャンペーンを展開して、最高にコズミックだ。要するに「中央銀行なる政府機関が、市民の財布に黙って手を突っ込む*1とは言語道断である」というのが彼らの共通した主張である。


Audit the Fed | Facebook
https://www.facebook.com/FedAudit


そんな見解は、残念ながら我が国では当ブログくらいしか見当たらないが、当然米国でもマイナーなわけで、基本的にはオモシロ親子扱い。法案は、昨日から中銀関係者に叩かれまくっている。


ダラス連銀総裁、FRB監査法案を痛烈批判 - WSJ
http://jp.wsj.com/articles/SB11815783148186973545804580452541258014312

パウエル理事:FRBの独立性脅かす監査法案は「誤り」 - Bloomberg
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NJIWKT6TTDS401.html


ほとんど見向きもされない、しかし重要な事実について記事を書くことは、とても楽しい。もちろん今日は、彼らを擁護しよう。市中の銀行にギャーギャー注文する、その同じ口調を、中央銀行に向けない理由を見つけることなど不可能である。そもそも我々が日常的な決済について安心できるのは、そんなこと気にも留めず商売を向くことができるのは、ドルや円が盤石だからだ。然るに昨今の中央銀行は、自らのサイズを広げてみたり、リスク資産を買ってみたり、あるいは為替に介入してみたり、様々な「非伝統的な」アクションを競う。100歩譲って、それらが結局ロクなものじゃなかったと確認するために、人類にとって必要なプロセスだったとしても、その詳細について記録し公開しない理由は見つからない。そう、透明性だ。御行は大丈夫ですか。

貸借

例えば日銀が抱える資産の状況は、彼らなりの、これまで通りの、決まりきったディスクロージャは存在するものの、我々が知りたい「非伝統的な」状況について、確認が容易になっているとは言い難い。リスクのある資産の評価について顧みれば、市場価格を反映していないばかりか、具体的な保有の詳細さえ確認しにくい。負債側に至っては、更に不透明である、紙幣の発行残高は一応示されているものの、すべてが本当に将来に支払いを要求されるものか明らかでない。床下に隠されたまま主人を失った永遠に眠る紙幣の分だけ、過剰計上されている恐れがある。

それらのすべてを確認し公開しようと思えば、もちろん様々な面倒があるだろう。おそらくコストも小さくない。とはいえ、どれだけ剰余があるのか、増えたのか減ったのか。できる限り把握して報告することの重要性は、言うまでもなく大きい。安全が足りなそうなら、資本を積み増す必要があるかもしれないし、準備が余り気味に感じられるなら、税金や国債の発行を減らすことができるかもしれない。兆円単位で丼勘定の現場なんて、21世紀には数えるほどしか残っていない。

リスク

さらに重要なことは、中央銀行の抱えるリスクについて、明らかにすることである。資産として抱える債券は、どのように金利に感応するのか。どのように物価に感応するのか。資産として抱える株式や不動産は、どのように価格が変動するのか。それらは全体として、どのようなリスクを構成するのか。

あるいは負債側の預金は、どのように集められ、何が起きれば増えるのか。逆に、何が起きたら減ってしまうのか。紙幣による安定的な資金調達は、未来に向かってテクノロジーが進歩を続ける中で、どのようなリスクに晒されているのか。我々は、いつ紙幣を捨てるのだろうか。そのことは、どのように中銀財務に影響を与えるだろうか。


な?要るだろ?どう考えても。やれよ。パウエル理事によれば、こうしたプログラムは「将来の危機への連邦準備制度の対応能力を新たに制限し得る」そうだ。馬鹿言うなっての。「独立性を脅かす」文脈が、我が国における議論とは大分異なる点は興味深いが、ともあれ金融危機に対応するなとは誰も言っていない。どのような対応の結果として、どのような状況が生まれるのか、詳細に公開せよと言っているのだ。目を瞑ったまま判断など、できるものか。どこまでも問う。御行は大丈夫ですか。

*1:中銀による債券買いを指す