要因分析と投資行動

トヨタの株が上がると思い、いくらか買っておいたとする。ところが実際には見込みは外れて、ドーンと下がってしまった。負けてしまった分は、買った金額と下落率との掛け算だと思うと、勝負の大きさとしての買った金額が大きいほど、あるいは見込みから外れて下落率が大きいほど、その痛みは大きい。ともあれ、この勝負は負けてしまった。

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  トヨタ


マツダの株が下がると思い、いくらか売っておいたとする。空売りだが、特に他意があるわけでない。トヨタと同じ自動車で、カタカナ三文字だったから採用しただけで、スズキでもよかった。で、やはりドーンと下がってしまった。勝った分は、売った金額と下落率の掛け算だと思うと、勝負の大きさとしての売った金額が大きいほど、あるいは見込みに沿って下落率が大きいほど、その旨味は大きい。ともあれ、この勝負は勝った。

  マツダ
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両者を組み合わせよう。トヨタを買って、マツダを売っていたとする。そして、どちらも同じようにドーンと下がってしまった。トヨタの買いとマツダの売りは同額で、両者の下落率も同じとき、この取引の生み出す結果は差し引きゼロだが、トヨタで負けてマツダで買ったと言えるだろうか。

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    ■    マツダ
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  トヨタ    ■
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そうでない場合は、少なくないだろう。トヨタマツダの差に注目し、相対的に前者が後者よりも強いだろうことを予測し、この取引を行った場合について考えてみよう。両者の下落率が同じだったことは、意図通りに「トヨタマツダに対して」勝つことはなかったが、大きく意図に反して「トヨタマツダに対して」負けることもなかったと評価するのが妥当だろう。つまり、トヨタで負けてマツダで買ったというよりも、注目していたところの両者の差分は、大きく動かなかったわけだ。


もちろん、売っていたのがマツダでなく英国債だった場合に、同様に両者はセットだと考えられるかといえば難しい。そもそもトヨタ英国債の差に注目する理由は、あまり見つからないからだ。今日のポイントは、たったひとつしかない。要因分析は必ず、行動の背景にある意図に依存する。どんな意図で、その行動をとったのか。複数のそれらは、どんなふう重ねられ、互いにどんな関係にあるのか。


馬鹿みたいな話で恐縮だが、結果の成否にかかわらず、要因を上手に分析できていないと感じたとき、行動の意図について実は、自ら把握していなかった場合は少なくない。あなたがプレイヤーなら、この点を徹底的に詰めることで確実に効率は向上するし、仕事を外注しているなら、説明があやふやな業者はさっさとクビにするのが吉だ。次へ次へと繋げなきゃ、前には進めないぜ。