長期金利が上昇すると、誰が困るのか

エルピーダ破綻とAIJ事件 日銀のデフレ・円高が招いた悲劇|高橋洋一の俗論を撃つ!|ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/articles/-/16477

この数字にはトリックがある。国債残高は600兆円として、もしすべて1年債であったなら、金利が1%とすると次の年に6兆円増加して、その後は増えない。実際には1年より長期の国債もあるので、徐々に上がり数年経って6兆円まで上がるが、その後は増えない。

ところが、名目成長が1%アップすると、時間が経過すればするほど税収は大きくなる。数年経つと6兆円以上増える。財務省の資料は、3年までしか計算せずに利払費が税収より大きいところだけしか見せないのだ。


デュレーションとALMの概念に触れながら、同時に長短の区別がゴチャゴチャという、おそるべき矛盾に目を瞑れば、高橋氏の指摘がまったく正しいのは、長期金利が上昇するとき、国債全体のデュレーションが長いほど、さほど財政を圧迫しない。具体的に、そしてすこし極端に考えてみよう。例えば政府が超長期債を発行しまくった後、いきなり長期金利が100%になったと思ってみる。このとき同語反復的だが、国債の価格は暴落していて、その価値は非常に小さい。例えば発行されている国債の全体が100円になっていたとすれば、政府は100円の余分な税収があれば、すべての国債を市場から自分で買い取ることで、借金を全部返すことができてしまう。


高橋洋一氏に、ちょっと質問 : アゴラ - ライブドアブログ
http://agora-web.jp/archives/1438729.html

実際には、公債残高は増え続けると見込まれるのであるから、問われるべきは、その時点で存在している公債残高に関する利払い費の推移と税収増の関係である。しかし、これをかなり先の時点についてまで計算しようとすると、名目成長率と名目利子率が同率で上昇したときに基礎的財政収支にどのような影響があるか等について想定を置く必要があり、その想定次第で結果は幅をもったものとなる。


ところが池尾氏が指摘するように、そうした状況下で、来年の社会保障支出を賄うことができるかといえば、そもそも税収が足りていないので不可能だ。もちろん新たに十兆円単位の金を貸してくれる者など、どこにもいないか、いたとしてもトンでもない金利を要求される。というわけで、馬鹿みたいに当たり前の結論に戻ってくるわけだが、まずフローのベースで財政が成り立つことは大切である。


さて、ひとつ大切な視点を忘れている。誰かの負債は誰かの資産であって、国債全体の価値が100円になってしまうとき、政府に金を貸していた側の財布は、ガッツリ100円まで減っているのだ。もちろん、それは銀行を経由した我々の預金である。その長期金利の上昇が「経済成長」によるものなら、また徐々に蓄えるチャンスもあるだろうが、政府の信用リスクによるものなら、状況は目も当てられない。(借金をして)商売して、利益を出して消費して、税金を納める余裕など、どこにもあるはずもないのは自明だろう。「ドーマー条件」のモダンな解釈である。はっきりと、わかりやすく結論を述べておこう。長期金利が信用リスクによって上昇するとき、まず困るのは政府よりも我々の方だ。