俺達緩和
もう一年も前の、あの地震のあった金曜の深夜、東京都心は車で埋め尽くされ、歩道にも人波が溢れる中をかき分け自宅に辿り着いて、最初に呟いたのは株のことでした。
落ち着いた。金の話で恐縮だが、全力で買う。自分の目一杯リスクを負担してやる。覚悟しとけ。
— Yoshi Noguchi (@equilibrista) March 11, 2011
その全貌も、津波の被害もよくわからず、余震も収まらない状況で、自分の道具から見た今後の心配は、資金調達が復興のチャレンジを妨げることだと反射的に感じました。要するに、売られるだろうと。また同時に、しかし買う理由しか、少なくとも自分の中には存在しないとも。
明日は買いだ。目先しか見えない馬鹿共は、遠慮なくカモってやる。ストーリーを売りにする運用屋は、格好つけて見せろ。時間軸に余裕がある個人は、未来の姿を教えてやれ。
— Yoshi Noguchi (@equilibrista) March 13, 2011
朝から晩までNHKを睨み続け、伝えられる状況の恐怖に怯えながらも、必死で考え、いや考えているつもりが「買う」という、ただ二文字だけが頭の中を駆け巡って、しかし必死で言葉を絞り出し、そしてなるべく多くの方に伝えたいと考えました。こんなときに株のことを考えるなんて、馬鹿げてるかもしれないけど、しかし、どう考えても今後にとって金は必要なはずでした。
拡散を希望します。株式市場は、いまこの瞬間にも意義があると、私は信じています。明日は買います。皆様、宜しくお願いします。 RT @equilibrista: 資金調達市場: http://bit.ly/hOFjiE
— Yoshi Noguchi (@equilibrista) March 13, 2011
周囲の勇敢なプロフェッショナルの方々から、それぞれに月曜には動くという声が聞こえ、また同時に、こんなときに動くものじゃない、ましてや他人を煽るものじゃないと、お叱りも沢山いただきました。リスクマネジメントとは何か、自分が現場で真剣に考え続け、取り組んできたことの答えは、しかし既に目の前に、大きく立ち聳えているように感じられました。ふざけるな馬鹿野郎。今買わねえで、俺がやってきたことに、今後だって意味を見い出せるわけがない。買いたいときに、買ってほしいと思われているときに動けないのなら、生き延びている意味がない。
投資の消費性ってタイトルは、今日のために付けたんだ。値段は単に、俺達が望むものを表現するのが未来の姿だ。
— Yoshi Noguchi (@equilibrista) March 13, 2011
月曜のオープニングは、信じられない光景でした。ほんの一瞬でも、全体から見ればゴミみたいに小さいはずの、俺達の買いが明らかにマーケットを押していたからです。自分はといえば、何を買ったらいいか考えることができず、たったひとつ、あの銘柄*1を除いては、なんとなく目についた株を適当にクリックして、同時に視界に入ってくる「買う」呟きを、ひたすらリツイートし続けました。まったく何が起きてるのか、理解が難しかったけど、「仕方なく」取引する巨大な連中の売りに潰されるはずが、明らかに違う風が市場に吹いていました。皆が買ってる。血が沸く。こんな体験は初めてでした。
今日やらずして、いつやる。
— 呂馬楊(ろばやん) (@RSB30) March 13, 2011
株買いたいけどあまりお金ない...。 それでも買うぞー!
— かえるオノウ[サポート中] (@kaeru_onou) March 13, 2011
絶好の買い場
— 一皮(いちかわ)蟹蔵 (@causalmap2006) March 13, 2011
かいまくりなう!血がとまんねー!
— らくーん (@kensangyunyu) March 14, 2011
最高だろ?
— Yoshi Noguchi (@equilibrista) March 14, 2011
明日はドテンして買いまくるぜええええ
— まるたばつお (@marutabatsuo) March 14, 2011
今朝は全力でロング。淡々とトレードします。
— ずんつく (@zuntsuku) March 15, 2011
俺はトレーダーなので、どこかでリスクを引き受ける。それが俺の仕事だ
— パンチョ (@pancho2001) March 15, 2011
全面撤退する人もいる中で、本日約定銘柄が20を超えた件。
— yuuki (@yuukim) March 15, 2011
絶望レベルはまだまだかもしれませんが、少し買ってしまいましたわ
— くま (@plateaux) March 15, 2011
自分が取りたいリスクを見極めろ
— 値・おぼえていますか (@Zoomchaka) March 15, 2011
「とどろく大砲の音とともに買い、鳴り響くトランペットの音とともに売れ」
— いとう (@Ito1973) March 15, 2011
歯を食いしばれ、自分!
— 呂馬楊(ろばやん) (@RSB30) March 15, 2011
株価、ちょっと前もこんなもんだったわな
— ぐれいはうんど山 (@seiichiro7) March 15, 2011
口角あげていくぞーっ
— あまの ゆか (@flyinglarus) March 15, 2011
現物市場で換金したいやついるらしいから資金供給してやったわああああ
— 09 (@marukyu_) March 15, 2011
俺は買うよ。
— 南雲 (@nag2moo) March 15, 2011
金工面して後に続きます。 RT @seiichiro7: 実弾があればもっと買えるが既にフルインベスト
— いとう (@Ito1973) March 15, 2011
でもいくぜ。心のはちまきしめた。
— ふっしーぎなカバです。 (@fu4) March 15, 2011
この速さならいえる。大勃起上げこいやーっ!!!
— ノブ子が来たりて笛を吹く (@napo_san) March 15, 2011
しゃああああ
— 値・おぼえていますか (@Zoomchaka) March 15, 2011
買い場すぎるのにー!
— ぐれいはうんど山 (@seiichiro7) March 15, 2011
最も早く新しいこの国の姿の具体的な想像に至った者が最も大きな果実を手に入れる。これは間違いねー
— 値・おぼえていますか (@Zoomchaka) March 15, 2011
一番慌ててるのは外人さんじゃ?
— たーくん (a.k.a. たーさん★) (@hrtmnr) March 15, 2011
もちろん、すぐに押し返されて戦線は後退し、そして原発の危険が伝えられるにつれ、市況も深刻化していきます。火曜日は、まるで空からナイフが次々と降ってくるようでした。苦しかった。自分が見ている範囲でも、あちこちから血の叫びが聞こえてきます。撤退を余儀なくされる方も出てきた。すこしだけ後悔しました。買いを叫ぶとき「できる範囲で」と強く書き添えるべきだったと。ただ買う進軍は、昨日よりも明らかに広がっていました。確実に、何かが起きている。世界は変化を続けているように感じられました。
リスクのある資産、例えば株式の取引が生まれるのは、売り手と買い手とで、見ている未来の姿が異なるからだ。そのことさえ理解していれば、怖がることなんて何ひとつない。
— Yoshi Noguchi (@equilibrista) March 15, 2011
節電で、すこしだけ街が暗い中、水曜日には、この進軍ラッパを一緒に吹いた方々の幾人かと、お会いして酒を飲むことになりました。気が動転していたからか、何を話したのか、よく覚えていないのですが、しかし [twitter:@Zoomchaka] [twitter:@kenchamam] [twitter:@hongokucho] [twitter:@boheism] さんらと何かを交換して、とても嬉しく、心強い気持ちになりました。凄い連中は、こんなときに凄くて、自分の視界も、以前よりも広がったように思えたのです。俺達が望む世界を、ひとつひとつ小さなアクションが、ほんのすこしずつ実現するんだという確信が湧いてきました。
俺達緩和の力は、これまでのところ、あまり大きく実現していないかもしれないが、しかし25世紀に一歩近づいたようにも感じられた。少なくとも、初めて、その一部をこの目で見て、感動した。
— Yoshi Noguchi (@equilibrista) March 18, 2011
その後、株価は急速に値を戻し、暖かくなるにつれ、先の真っ暗な悪夢の週に負担したリスクは、その見返りを受け取ることになります。正直に言って、まったく想定とは異なりました。10年かけて取り返すつもりが、半年もかからなかった。もちろん日本中の現場の頑張りは、それは奇跡と言わざるを得ない力強いものであったことは間違いなく、しかし自分の見方を付け加えるなら、世界中で繰り広げられる金融緩和の威力を、いい意味でも悪い意味でも、感じざるを得ませんでした。僕らの戦いよりも「偽りの夜明け」がもたらすリスクの方が、ずっと大きかった。
ただこのとき、僕は初めて、俺達緩和を目撃したのです。もちろん参加もした。それは生き残った僕らの必然で、未来に産み落とした、大きな卵だったと今も信じています。力を貸していただいた皆様、ありがとうございました。
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