円分裂案

ユーロの分裂が望ましくて、円の分裂が望ましくない理由を探そうとしても、国だとか道だとか州だとか、そういう単位を取っ払って理屈を考えるとき、難しいように思われた。なので、円も分裂させよう。


さて、まずは現状から。国債だけじゃなくて、「包括緩和」で余計なもの抱え込んでるだろと、乱暴だと感じられるかもしれないが、要するに現在の日銀の資産側だと思って下さい。


国債


第一に、負債としてのマネーを便宜的に分割する。発行体は同じまま、紙幣のデザインや預金の名称を変えるという話だ。しかし分裂する夕張や東京の自治体は、それぞれ夕張円や東京円での納税を要求する。なので、夕張や東京で経済活動を行う者は、それらを常に準備する必要に迫られる。中央政府に払う税については、あとで考えることにしよう。


国債夕張円
東京円


第二に中銀の分割だが、資産側は同じ構造のまま輪切りにする。この時点で独自の金融政策が可能になり、交換レートは動き出す。が、以降のアクションについて、そのタイムラインを明確にはしないことが肝要だ。


国債夕張円
国債
国債東京円


資産構成が変わらなければ、あるいはいつ変わるのか明らかでなければ、投機屋は東京円を買い上げることも、夕張円を売り浴びせることも難しい。例えば何年もこのままなら、各中銀の資産が生み出す利益(損失)は金太郎飴で、異なる金利水準に誘導することも簡単でなければ、クレジットに差がつく理由もない。


夕張債/
国債
夕張円
国債
国債/
東京債
東京円


とはいえ独自に中銀を持ち、その負債での納税を要求し用意させるわけで、(かつての同胞ではあるものの)他の政府に貸し出す義理は大きくない。夕張中銀と東京中銀は、それぞれに(財政ファイナンスを要求するだろう)自治体からの「独立性」を持ちながらも、徐々に貸し出しをシフトさせる。独自の(徴税力を担保にした)地方債保有、独自の金利政策、独自のクレジットとともに、交換レートもアクティブに動き出すことになる。


夕張債夕張円
国債
東京債東京円


そして最終形だ。夕張中銀が岩手債を買う理由や、あるいは東京中銀が香川債を買う理由は、ゼロではないものの、その地域で皆が用いるマネーによる資金調達は、その自治体に供されることになるだろう。もしかすると部分的には、中央政府の発行する債券を買ってもよいかもしれない。他の中銀と同じように、もちろん(いずれの)政府からの独立性を高らかに宣言し、状況に応じてリスクを抑えていく意欲とアクションは、当該地域の預金者のために必須であることは言うまでもない。


どうでしょう。皆さんの腑に落ちたろうか。経済の活動のサイクルが異なれば、金利の水準は異なる方が自然だ。それぞれに独自の金利環境を無理なく表現しようとすれば、上記のような形がひとつではないか。もちろん中央政府の役割が、いますぐ消滅するとも、あるいは再分配にかかる問題が簡単に解決するとも、なかなか考えにくい。とはいえ、ギリシャや夕張に起きた悲劇は、無理矢理に他の地域と同じ金利を用いたことが一因であるように、僕には思えてならない。だから、よりよいシステムを見つけたいんだ。


ヘイ日本、だから俺を雇いなよ。安くしとくよ。