QE2 Disappointment

と題するコラムで、クルーグマンはQE2について、政府と中銀とを連結で見れば、要するに皆が持つ債券が短くなっただけだと言う。

 政 府     中 銀
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資産|国債 国債|紙幣

      連 結
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     資産|紙幣

When you look at it that way, we're talking about a reduction in the average maturity of the debt held by the public, which should, other things equal, raise the price of long-term debt and hence reduce long-term interest rates.

http://krugman.blogs.nytimes.com/2011/04/24/qe2-disappointment-wonkish/


随分とザックリして*1気持ちよいが、そもそもどうして中銀を「子会社」化したのか、という大切なポイントへの意識を、その連結の視点は希薄にさせてくれる。国債は償還されていない*2のだから、デュレーションのリスクは消え去っていない。子会社としての中銀に付け替えられているだけだ。メーリングは、(キャッシュとリスクとを分離して見るとき)政府と中銀との間で金利スワップを結んでいるようなものだ*3と指摘するが、要するに長期金利が上昇すれば、政府の債務は減り、その分だけ中銀の資産が減るわけだ。


我々は、その中銀の発行する超短期証券*4を、日常的な決済に用いている。親会社としての政府が発行する債券よりも、その信用を高位に保つために独立性を付与したことこそ「人類の英知」だと、白川総裁は主張*5する。僕がつけ加えたいのは一点だけ。紙幣や預金が薄く広くリスクを負担することは、打ち出の小槌に「見えている」だけで、一円たりとも生み出していない。移転は、1)合意の下に、2)意図を持って、行われるのがモダンな社会だ。選挙で選ばれない日銀委員が決め、投機屋にも金が渡るシステムは、お世辞にも素敵とは言えない。言い換えれば、問題はハイパーインフレーションではない。25世紀の中銀*6は、その目的を決済リスクの最小化に限定し、紙幣や預金が負担するリスクは、持ち主が決めているだろう。

*1:しかも長期金利は下がると言えるか怪しい

*2:どころか借金は増えているわけだが

*3:http://ineteconomics.org/blog/money-view/after-QE2

*4:一万円札のことだ

*5:http://jp.wsj.com/Japan/Economy/node_100602

*6:親会社が吸収しても一向に差し支えない