人生のバランスシートを微分してみる

人生のバランスシート

人生の財務戦略を立てようとするとき、いわゆる普通のバランスシート的な発想は、あまり役に立たない場合が多い。貯金が何百万円溜まったとか、そのうちどのくらい株を買おうとか、そんな目に見える資産のチャレンジよりも、来年には昇進するとか、再来年には転職するとか、来月には退職するとか、そういう人生アクションの方が、全体に与える影響はずっと大きいからだ。だからといって、とにかく「お前が頑張れ」というのは、戦略としても、助言としても、あまりにも月並みだ。所与の「頑張り」予測の下で、もちろん貯金の動向は人生を左右する。


引退までの給与収入

年金

自宅

現預金

リスク資産
引退までの生活費

引退後の暮らし

住宅ローン

好きなことにつかうお金
家族への遺産


そう、どうして人生の財務戦略を練るのが面倒なのかといえば、それは「普通の」バランスシートがプアだからだ。明日の仕事と預金通帳は全然別のものだが、しかし我々は何としても、そいつらを同じ土俵に乗せなければならない。最近話題*1の「モダンな」バランスシートの考え方だ。将来に金を生み出すものは、すべて資産である。つまり将来の給料は資産だ。将来に出て行く金は、すべて負債である。つまり将来の生活費は負債だ。人生がひとつの表になってしまうのは、さびしいと感じられるかもしれない。しかし、これは明るい未来に向けた作戦会議のための重要な地図なのだ。

微分してみる

このモダンなバランスシートは、もちろん時々刻々と変化する。微分などと格好つけてみたが、今日のチャレンジは、来月のそれとの差分を考えてみることだ。それぞれの要素を覗いてみよう。「引退までの給与収入」は、今月貰う分だけ減っているだろう。厳密に考えれば、例えば「年金」も同じだが、将来受け取る金額の割り引き方も変わるはずだが、今日は大雑把でいい。「引退までの生活費」も同様に、今月使ってしまう分だけ減っている。で、住宅ローンを払って、好きなことに多少お金を使ったら、残ったお金は現預金かリスク資産だ。もちろん自宅は、ちょっとだけ「老化」している。勘のよい方は既にお気づきだと思うのだが、微分というか差分は、P/Lという奴に近いコンセプトだ。


さて、転職すると心に決めるとき、人生のバランスシートはどんなふうに変化するだろう。もちろん、その一番大きなコンポーネントが、左上の奴が、大揺れである。考えてみるとコイツは、おそらく刻一刻と変化している。今日の昼飯で素敵な出会いがあるとき、トイレでトンでもないアイデアを思いつくとき、人生のバランスシートはダイナミックに動くのだ。