信用緩和とタイミング戦略

中銀のバランスシートの大きさ、必ずしも緩和度表さず=日銀論文 | Reuters
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-10272720090729

非伝統的金融政策について「信用緩和」と「量的緩和」に分類できるとしたうえで、信用緩和においては、中央銀行の資産サイドの項目である多様なオペや資産買い入れの各手段をどのように組み合わせて金融環境緩和を図るかが重要であり、それらを単純に足し上げたバランスシートの「量」の大きさや拡大ペースは、政策の緩和度を表すものにはならないと指摘した。


まったくもっておっしゃるとおりで、バランスシートのサイズなんぞに何の意味もない。ブタ積みの当座預金の空虚さは、自分自身を顧みたって誰もが理解できることで、新たに借金して同額預金することに何の意味もないのと同じだ。


で、乱暴に言えば、預金じゃなくて株を買い上げちまえというのが信用緩和なわけで、「下がったら困るじゃん」という基本的な指摘に対して、「気をつけます」と論文は答えている。


今次金融経済危機における主要中央銀行の政策運営について:日本銀行
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0907c.htm


もちろん気をつけてもらわなければ困るのだが、とはいえ通貨の発行という形で借金をして、そいつでもってリスクを負担することの本質について、この論文は明らかにしていない。従って、そのことによるデメリットも不明瞭なままだ。


極端な世界を考えてみることは、いつでも素敵だと思うのだが、日銀がその資産でもって市場リスクを負担するのなら、それはid:equilibrista:20090706で書いたように、お金の代わりに支払い手段としてETFを使っているのと同じことだ。そのとき我々には、リスクなく購買力を保存しておく手段が存在しない。なぜなら貨幣は株だからだ。


また、株式市場のタイミングを見極めようとするのは、あらゆる投資判断の中でも最も難しいもののひとつだということは広く知られている。「今は下がり過ぎだと思うから、一時的に買い支える」チャレンジが成功する可能性は、概ね五分五分と考えるのが保守的なのだろうし、それが日銀の仕事だとは到底思えない。